第四章 14
翌朝、ラミルはサーたちと共に村の中を流れる小川の近くに建てられた鍛冶場へ向かった。
建物の中は埃だらけで火を起こせるような状態ではなく、部屋の隅にはラミルの体がすっぽりと入ってしまうほどの大きな水瓶が5つほど並んでいる。
「ラミル様、我々はまず小屋の中を片付けますので小川の水を汲んで全ての水瓶を満たしていただけませんか?」
「わかりました、力仕事なら任せてください」
大きな桶を両手に持って小川へおりていき水を汲み始める、1時間ほどかけて2つの水瓶を満たした頃、小屋の掃除を終えた3人は釜に火を入れてセラム鉱石を鍛える準備に取り掛かった。
昼近くになってようやくラミルが全ての水瓶を満たすとサーに声をかけた。
「他には何をすればよいですか?」
「これからは私たちの仕事です、ラミル様は休んでいてください」
「しかし、何か力を使うことでしたら」
「大丈夫です、見ているのは構いませんが、とても危険ですので離れていてください」
「わかりました、邪魔をしてしまっては迷惑でしょうから」
ラミルは部屋の隅にある椅子に腰をおろした。
3人が熱せられた釜の前で作業している姿を見て父ラシンドのことを思い出す。
(父さんもああやって剣を作っているんだろうな)
(ラミル、2人に会いたくなったんだろ)
(うん、でもザハールに戻っても会いに行くのはやめようと思うんだ)
(どうして?せっかくだから会いに行けばいいじゃないか)
(2人に会ったらなんだか弱気になってしまいそうなんだ、ウルトでシールたちにあんなに偉そうなことを言ったけど、本当はアミとルルを見ていてレイラのことを思い出した)
(そうか、ラミルはレイラをとても可愛がっていたからな、わかったよ、できれば剣のことはお父さんに話しておいた方が良いかと思ったんだけど)
部屋の中には金属のぶつかりあう音と3人の老人たちの掛け声だけが響いている。
その作業はわずかな食事の休憩をはさんで夜遅くまで続いていた。
(この人たち大丈夫か?年齢的にかなりきついと思うけど)
(でもなんか顔が嬉しそうだよ、最初に村の入口であった時よりも元気そうな顔している)
しばらくすると、大きな一枚の板が整形されて盾の形になり、サーは1人の老人に声をかけた。
「仕上げは任せたぞ」
男は頷いた。
「我々は外に出ましょう」
サーはラミルに向かって声をかけ、鍛冶場の外へ出るように促した。
「いったい何が起こるのですか?」
「仕上げにはジゼルの呪文が必要なのですが、その呪文はあの男にしか使えません。その呪文は近くにいる者を石化させてしまうため離れていなければならないのです」
3人が部屋から出ると扉が閉められ、中から老人の雄叫びのような声が10秒ほど聞こえた、再び静かになると老人が疲れた顔で部屋から出てきた。
「ラミル様、盾が完成しました。サー、少し休んだら次の製作にかかろう」
「私たち2人はもう少し作業するが、お前はもう休め、無理をするな」
「しかし・・・」
「兜と鎧も作らなければならん、仕上げはお前にしかできないのだ、今夜はもう休んでくれ」
男は納得したように頷くと、ゆっくりとした足取りで自分の家へ戻っていった。
「ラミル様、今度は少し手伝っていただけますか?」
「はい、わかりました」
3人が部屋に入ると、机の上には青白く輝く盾が置かれていて、その中央には腕輪と同じジゼル王家の紋章が刻まれている。
「やはりセラム鉱石で作られたものは美しい」
盾を手に取ったサーがつぶやいた。
ラミルは手渡された盾を持って、それがとてつもなく軽いことに驚いた。
盾自体の厚さは今まで使っていた物よりもはるかに厚くて頑丈そうだが、重さは半分にも満たない感じがする。
「これは凄い・・・」
その後も3人で夜遅くまで作業が続いた、途中で手を休めて椅子に腰掛けたラミルはいつのまにか眠ってしまった。




