第四章 12
セラムの山裾に沿って西に進み、日が傾き始める前にバイス山との谷の入口にさしかかった。
(ハンはこの谷の奥みたいだな)
(こんな谷に人が住んでいるんだな)
谷間を流れる小川に沿って山道が続いているが徐々にその道は狭くなり、岩も多くて馬を走らせて進むことが困難になった。
(ハンまではあとどのくらいあるのかな?この速さじゃ時間がかかりそうだな)
(この状況ではしかたないよ、これでも歩くよりは速いし、荷物だってあるから)
細い道をゆっくりと進んでいると、誰かに見張られているような気配を感じた。
(健人、さっきから誰かに見られているような感じがしないか?)
(うん、僕も感じていたよ、だけどどこで見ているのかわからないし襲ってこないところを見ると敵ではないかもしれない、油断禁物だね)
誰ともわからない視線を感じながらハンに向けて馬をゆっくりと進めていると、突然、数えきれないほどの鳥が大きな羽を拡げて襲ってきて鋭い嘴で鎧や兜を叩いた。
(なんだ、こいつら、まったく魔物の臭いなんてしなかったのに・・・)
ラミルは急いで馬を降りて剣を抜いて構えた。
(健人、こいつら死鳥だよ、群れをなして動物の骸とかに群がる鳥だよ)
(なんだ、カラスみたいなものか、そういえば色もカラスに似ているな・・・僕たちの体についている魔物の血の臭いに集ってきたのか)
ラミルは必死になって剣や盾で追い払おうとするが、血肉に飢えた死鳥は鋭い目つきでラミルに襲いかかってくる。
その時、崖の上から矢が飛んできて1羽の死鳥を貫くと、絶命して地面に落ちた鳥から流れ出る血に他の鳥たちが群がりはじめた。
(よし、チャンスだ、今のうちに逃げるぞ)
馬に乗ると急いでその場を離れた。
(さっきの矢はいったいどこから飛んできたのだろう?)
(誰かに見られている気配がしていたけど敵ではないみたいだな)
なんとか死鳥の群れから逃れて荒れた山道を進んでいくと遠くに小さな集落のようなものが見えてきた。
(ハンに着いたみたいだ、どんな人たちが住んでいるんだろう)
(ウルトのお婆さんが名前を知っていて、しかもこの鉱石を扱えると言うのだから、ここもジゼルの末裔が暮らしている村だろうな、もしかするとこのままセラムを越えればジゼルがあった場所も近いのかもしれない)
ラミルの乗った馬が村に近づいていくと入口に3人の老人が立っていた、馬を降りて引きながら近づいて行くと真ん中の老人が深々と頭を下げた。
「ようこそ、こんな山奥の村へお越しくださいました、戦士様」
「この村にいるサーという方にお会いしたいのですが、いらっしゃいますか?」
「私がサーです、どうぞ私の家に来てください、ご案内します」




