第四章 10
ウルトを出て5日目の昼にようやくアンの町にたどり着いた。
途中で野宿して休んだものの、ウズルを過ぎて魔物が出るようになってからはほとんど眠ることが出来なかったため疲れていたが、ラミルを迎えた兵士も町にいる他の兵士もそれ以上に疲れている様子だ。
(兵士たちがかなり疲れているみたいだな、とうとう魔物が現われて出撃したばかりなのか?)
(ここの兵士はかなり鍛錬が足りなかったみたいだから、魔物に襲われたら無事では済まないだろう、それに魔物が出て騒ぎになったにしては町の中は相変わらず賑やかだよ)
「ラミル・・・ラミルじゃないか」
背後から聞き覚えのある声がして振り返ってみると、ラミルが始めて出撃した時に一緒だったハスバルが近づいてきた。
「ハスバル様、お久しぶりです、どうしてアンに?」
「ジクーズの弟のジラルは知っているよな。この前、ここにお前を探しに来た時にここの連中があまりにも怠けていると王様に報告があって、それで俺がここに来たってわけさ」
「なるほど、そうだったんですね」
ラミルは苦笑いした。
「まったく、ここの兵士どもは酒ばかりくらっていて、どうしようもなかった」
どうやら、ハスバルに徹底的にしごかれているから疲れているようだ。
「ところで、ラミルはサザルの方から来たようだが、何かわかったのか?」
「西の果てにあるウルトの町まで行ってきました、サザルの北にあるハンという村に手掛かりがあるようなので戻ってきましたがれているのでアンで休ませて貰おうと思って」
「そうか、それなら今夜はゆっくりしていけよ、どうだ、一緒にめしでも食いにいかないか?」
「そうですね、久しぶりにザハールの話しも聞きたいですし是非行きましょう」
ラミルは少し休んで夜になると2人で賑わう町の酒場に行き、ハスバルは酒を楽しみ、ザハールの話を聞いた。
「ザハールはいかがですか」
「周辺の魔物は相変わらずだな、城壁に守られていて魔物が町に入ってくることが無いから町の中は安全だが、商人たちの往来が減っているせいか物も減ってきている気がする」
「そうですか、私もいくつかの町や村を見てきましたが、そういう意味ではこのアンが一番賑やかで物が豊富にある気がします」
ラミルは今まで見てきた他の村や町の状況なども話した。
「それから・・・ザギルを覚えていますか」
「消えたザギルか?」
「はい」
「見たのか」
「いいえ、まだ会ってはいませんが、どうやらとんでもない力を身につけたようです」
「とんでもない力?」
「はい、ウズルという村に現われたらしいのですが、なにやら呪文を使ったと、そして、シーバという町をたった1人で全滅させたそうです」
「呪文?たった1人で村を全滅させたのか?確かにザギルは強かったが、そこまで」
「会っていないので定かではありませんが悪魔のようだったと」
「悪魔か」
ハスバルの顔色が変わった。
「もしかするとアンにも現われるかもしれませんので十分に注意してください」
「わかった、もし現われたら・・・ここの兵士どもじゃ一瞬でやられてしまうな」
ハスバルは苦笑いして残っていた酒を飲み干した。




