第四章 9
ラミルはハンを目指して走り続けた。
シーバの近くを通るときはシチラの兵と遭遇しないか不安だったが運よく遭遇せずに済んだ、しかし大きな石の塊を積んでいたせいで思ったより速く移動することは出来ず、4日ほどでようやくウズルに近づいた。
(健人、ウズルに寄っていく?)
(いや、ロザイルと一緒ではないからエミルザさんに心配をかけてしまうかもしれない、やめておこう)
やはりウズル村を過ぎる辺りまでは魔物に遭遇することはなかったが、バグロブの南を通過しようとした途端、魔物の臭いとともに遠くで魔物同志が争う姿が見えた。
熊の魔物の他に、初めて見る魔物もいる。
(おい、魔物同士が戦っている、あれは蛇じゃないか?)
巨大な蛇の魔物が数頭の熊や猿の魔物と戦っている、蛇に噛まれて毒にやられたのか数頭の猿の魔物が動けなくなっているのも見える。
(蛇毒か、今までは薬を使わずに済んだけどこれからは必要になりそうだな)
1頭の熊が蛇に噛まれた、噛まれた熊はすぐさま蛇を捕まえて力で体を引き割いたが、その熊もすぐに泡を吹いて倒れた。
ラミルは魔物たちに気づかれないように去ろうとしていたが、生き残った2頭の熊と3匹の猿の魔物に気づかれたようで、ラミルに向かって動きはじめた。
ラミルが馬を降りて剣を抜くと猿の魔物は突然走り出し凄い勢いで迫ってきた、ねずみの魔物ほど変則的な動きではないが動きは比べ物にならないほど速い。
猿の魔物はラミルではなく馬に襲いかかろうと迫ってきた、初めて戦う猿の魔物に対してラミルは馬を背にして盾と剣で振り払うだけのつもりだったが、軽く剣を振っただけなのに剣先が魔物を捉えた。
(あれ?なんか凄く剣が軽いぞ、こんなに軽かったか?)
(もしかしてこれが腕輪の力なのかも)
それを見た残りの2匹が怒りを露にするような表情でラミルに襲い掛かってきたが、ラミルは同様に軽く剣を振り回しただけなのに動きの速い2匹の猿の魔物をそれぞれ一撃で仕留め、熊の魔物を睨むように見た。
熊の魔物もラミルを睨み返すと体の大きい方の1頭が叫び声を上げて突進してきた。
ラミルは剣を構えて魔物が間合いに入ってくるのを待つと突然右腕に衝撃が走って剣が輝きを増した、しかし剣先にはハルスの竜巻は現われていない。
魔物がラミルの間合いに入ると素早くその大きな爪をかわし、胴を割こうとして剣先がわずかに魔物に触れた瞬間、今まで感じたことのないような風圧が魔物の体を弾き飛ばすように引き裂き血飛沫も上がらないまま粉々に消え去った、それを見た残りの1頭は恐ろしくなったのか慌てて逃げていった。
(なんだ、今の、ハルスなのか?でも竜巻は出てなかったよな)
(凄かったな、触れただけなのに、あのでかいのが一瞬で消し飛んだぞ)
(それに、ハルスを使ったときのように疲れが無い、いったいどうなってんだ?)
魔物を蹴散らしたラミルは先を急いだ、それから幾度も魔物と遭遇したが一度もハルスを使っていないのに同じように剣先が触れただけで魔物は粉々になっていった。




