第四章 8
「それは、『光の石』では無いようね、色からすると・・・どうやら『風の石』のようね」
「風の石?」
「ええ、腕輪と石はそれぞれ3種類あって、レミル様の持っていたものはジゼル最高の力を持つ光の石と、あなたの持っている『力の腕輪』なの、詳しくは本に書かれているのを読んでほしいのだけれど簡単に話すわ、まず腕輪の中を見てちょうだい」
ラミルは腕輪を覗きこんだ、小さなくぼみがあり、良くみるとそのくぼみのあたりは表面に貫通した小さな穴が開いている。
「風の石をその腕輪のくぼみに入れてみなさい、ちゃんと入るはずだから」
ラミルは何度か石の向きを変えて試してみると、すっぽりとくぼみに風の石が収まり、表面の穴からわずかに石が見えた。
「これで腕輪は風の石の力を発揮するわ、あなたがその腕輪の力を使いこなせるかどうかは、あなたの資質の問題、ところであなたは左利きなの?」
「いえ、右ですけど」
「それなら腕輪は右腕にしなさい、これは利き腕にしないと意味が無いわ」
ラミルは腕輪を右腕に嵌めてみた。何も変わらない。
「いきなりは変わらないわよ、使いこなせるかは、あなた次第と言ったでしょ」
「わかりました」
「それから、本と一緒に渡した大きな石の塊だけど、もしも行く先が決まっていないなら、一度サザルの村に戻り、その北にあるハンという村に行きなさい」
「ハン?」
「そして、そこに住んでいるサーと言う男にこの塊を見せなさい、きっとあなたの役に立つ物に変えてくれるわ」
「はい、わかりました、どうもありがとうございました」
ラミルは明け方近くになって隣の家に戻った、3人とも安心したのかよく眠っている、3人を起こさないように蝋燭の明かりを点すと老婆から貰った本を開いた。
ムーラの字とは違う文字で書かれている、アルムの文字とは少し異なるが何故か読める。
ジゼルに伝わる呪文と、セリム石について記す。
この書に書かれたことは、ジゼルの血を継ぐ者以外に教えてはならない。
呪文は生死を司り、ときに国を滅ぼす力となる。
(なんだか怖い本みたいだな、でもレミルの子孫だからジゼルの血を継いでいるし、読んでも平気だよな、お婆さんも読みなさいって言っていたし)
本は最初にセラム鉱石について書かれているようだ。
セラム石は、この世に存在する最高の硬さと、魔力を持つ石。
それは術者の血を継いだ者のみが持つことを許されたもの。
術者の石は、石の持つ力で己の魔力を引き出し、呪術を使うことができるようになる。
(なるほど、ジゼルの呪術の力は、このセラム石で出来た術者の石の力なのか)
最強の石は、王家に伝わる光の石。
王は、光の石と力の腕輪で国を治め、民を幸福に導いた
(力の腕輪?ジゼル王家?レミルはジゼル国王の一族だったのか?)
(じゃあ、なぜ病が発生したのだろうか、レミルは腕輪も石も持って戻ったはずなのに)
しばらく読みすすめていったが、本は流行病が発生する前に書かれたものらしく、流行病のことや、国が滅んだことなどは書かれていなかった。
日が昇って明るくなると、子供たちが起きてきたので読むのをやめた。
「おはよう、ぐっすり眠れたかい?」
「はい、ラミル様は起きていたの?」
「ちょっと調べごとをしていたからね、ところでシール、君に話しがある」
「なあに?」
「私はすぐにこの町を出発しなければならない、やらなきゃいけないことがあるからね」
「そんな・・・」
「シール、君は男の子だ、2人のお兄ちゃんだろ、隣のお婆さんはとても優しくて良い人だから信頼して良い。だからこれからはお婆さんの言うことを聞いて2人の妹と仲良くするんだ、そしてこれからは君がアミとルルを守るんだ、わかったね」
シールは、今にも泣き出しそうな顔をしてラミルを見ている。
「泣くな!男の子だろ、大きくなったら兵士になるんだろ、だったらもっと強くならなくちゃだめだ、シールが大きくなって兵士になったら、きっと会える、でもその前にまた必ず会いに来る」
ラミルは笑顔で、必死に涙を堪えているシールの頭を撫でた。
「うん、僕強くなって妹たちを守るよ、ラミル様の言いつけを守る」
「よし、いい子だ」
老婆の用意した食事を済ませると、ラミルはすぐに出発する支度を整えた。
「シール、アミ、ルル、これからは3人ともお婆さんの手伝いをしないとだめだぞ」
「特にアミとルルは、ご飯を一緒に作るようにするといい、シールも薪割りや重い荷物を運ぶのを手伝うこと、良いね」
3人とも元気よく返事をし、老婆も微笑んでいる。
「では、3人を頼みます」
「わかったよ、あなたも気をつけて行きなさい、見張りの兵士に馬を用意しておくように頼んでおいたから、それに乗っていきなさい」
「はい、ありがとうございます」
ラミルは町の入口で馬を借りると、4人に大きく手を振ってハンに向かった。




