第四章 6
ウルトの入口で王の手紙を見せて町に入ると、まずは3人の面倒を見てくれそうな家を探すことにした。
もちろん町には兄妹たちの知り合いなどいないため、町の戦士や兵士に尋ねると、皆が口を揃えたように湖畔に住む老婆が良いと言うので、その老婆の家を尋ねた。
「そうかい、そういうことなら隣の空き家に住むといい。私も3人の面倒を見るというわけにはいかないけど、妹2人に私の手伝いをしてもらえるなら構わないよ。どうせ私も1人だし、一緒なら少しは楽しくなりそうだ、お兄ちゃんには町で何か仕事を探してあげようと思うけど、何がしたい?」
「僕は兵士になりたい、そしてガルディアを倒すんだ」
(ラミル、誰かと同じようなことを言っているな・・・)
ラミルはシールの頭を撫でると、目を見ながら諭すように言った。
「その年では兵士になれないな、それにまだ剣を持ったこともないだろ?今はお兄ちゃんとして2人の妹だけを守ればいい、そしてもっと大きくなったら兵士の試験を受けなさい」
ラミルが優しい言葉をかけていると、老婆がラミルに声を掛けた。
「あなたラミルと言ったわね、できれば今日はこの子たちと一緒に居てあげて、その方がこの子たちも安心するだろうから」
ラミルも子供たちと共に老婆の家で食事をご馳走になると、子供たちは安心して疲れたのか隣の家に入ってすぐに眠ってしまい、ラミルも少し横になろうとした時、老婆がやってきた。
「ラミル、ちょっと来てくれないかしら」
「はい・・・」
老婆は家の裏手にラミルを連れていった。
そこには一艘の手漕ぎの舟があり、雨に濡れないようにカバーのような布が被せてあるため、傷んでいる様子は無い。
「実はあなたに頼みがあるの、疲れているでしょうから明日の夜で構わないけれど、この湖に浮かぶ小島にお金とか大切なものを隠してあるの、これからあの子たちと暮らすために必要だし、他にも重たい物もあるから一緒に行って運んでほしいのよ」
「わかりました、私も少し先を急いでいるので、今夜行っても構いませんが」
「そう、それならもう少し遅くなって町が寝静まってから行きましょう」
ラミルは家に戻ると、子供たちの側で少しだけ横になって体を休めた。
(あのお婆さん、島にお金とかを隠してあるって言っていたな)
(わざわざ島に隠している理由はわからないけど、悪い人ではなさそうだし)
(盗まれないためとは言っても、なんかおかしくないか?)
(でも子供たちの面倒を見てくれる人を教えてほしいと聞いたら、町の皆が口を揃えてお婆さんを推薦していたし、悪そうな人には見えないよ)
(うん、それはそうだけど・・・失礼かもしれないけど、少しは疑った方がいいよ)
(わかったよ、それにしても健人は心配性だな)
(ラミル、信じることは大切だけど、こんな時代だから疑うことも覚えないとだめだよ)
夜が更けて町が静まった頃、迎えにきた老婆とともに湖に舟を出した。
島は小さく、人が10人ぐらいしか上陸できないほどの広さで、そのほぼ中央にラミルの背丈ほどの岩があるだけだ。
舟を杭に縛り付けて島にあがると、老婆の指示で岩のそばを掘った。
やがて小さな子供が入れるくらいの箱が姿を現わし、老婆はそれを指差した。
「この箱の中身を全て運びたいから、手を貸してちょうだい」
箱の中には袋に詰められた金貨と、重くはないがかなり大きな石の塊、そして数冊の古い本が入っている、たしかに老婆が一人で運び出すには時間と手間がかかりそうだ。
全ての荷物を舟に運んで漕ぎ出そうしたとき老婆は1冊の本を差し出した。
「ラミル、これをあなたに渡すようにムーラ様に言われているの、詳しくは家に着いたら話すから持っていてちょうだい」
「えっ?ムーラ?」
なぜ老婆がムーラを知っているのかはわからないが、受け取った本と石の塊を足元に置くとボートを漕いで老婆の家の裏手へと戻った。




