第四章 4
一方のロザイルはなんとか槍で応戦しているものの、健人の予感は当たっていた。
魔物と戦ったことも無いロザイルは、既に人間とは思えないシチラの兵士相手に防戦一方で、野宿や移動の疲れも出てきたのか動きも徐々に悪くなってきていた、そして一瞬の隙をつかれ、とうとうシチラの兵に槍を弾き飛ばされると、その勢いでロザイルも尻餅をついてその場に座り込んでしまった。
「しまった・・・」
ロザイルが飛ばされた槍の方を見た瞬間、弾き飛ばされた槍に男が飛びつき、その男は悪魔兵に斬られそうになっているロザイルの前に立ちはだかって素早く槍を構えた。
男はロザイルに襲い掛かろうとしていた兵士の剣を軽々と弾き返すと、ロザイルには全く槍先が見えないほどの槍捌きと動きで兵士たちの首を次々と刎ね落とした。
「す、凄い・・・」
ロザイルは腰が抜けたように座り込んだまま動けずにいた。
ラミルが3人の兵士を倒してロザイルの方を振り返ると、すでに周囲に敵兵の姿は無く、ロザイルは無様に尻もちをついて目の前に槍を持って仁王立ちになっている男を見上げている。
「ムーラ!」
ラミルは、その男に向かって叫んだ。
「えっ?この老人が?」
そこにはハサンの姿をしたムーラが立っていた、槍先は青く輝きオーラを放っている。
「ラミル、だいぶハルスを使いこなせるようになったな、それに比べてロザイル、そなたは鍛錬が足らぬ、魔物と戦うのは始めてか?」
「は、はい、あ、あれが魔物なのですか?」
「いきなり悪魔兵では荷が重かったかもしれんが、それにしても情け無い、儂の書いた書を読んでいただけでは月の槍を使いこなすどころか魔物相手には何の役にも立たんぞ」
「し、しかし、人を斬るなんてことは」
「ラミルも戦士になるまでは、人どころか魔物さえ斬ったことはないぞ。だが学校では常に最も重い剣で体を鍛えていた。もちろん持って産まれた才能もあるが、ロザイルよ、そなたはまだまだ鍛錬が足りぬ、ラミルと共に戦うのであれば鍛錬と経験が必要だ。そして相手の動きを見る目も養わねばならない、はっきり言って今のままではラミルの足手まといだ。しばらくはこの私と行動を共にし、足手まといにならぬよう槍の腕を磨く必要がある」
「しかし、ロザイルも槍の腕はそれほどでも・・・」
「ラミル、そなたは本当にそう思うか?同情などいらんぞ。今のロザイルは戦った経験の少ない相手ならば少しは戦力になるかもしれん。しかし、お前たちが戦わねばならないのは魔物、そして悪魔だ。ザギルという男はお前が思っている以上に強くなっている、そこのシーバの村をたった1人で一瞬のうちに全滅させてしまった」
「シーバが?そんな・・・」
「剣の腕前、動く速さ、そして使う魔力も強力になってきている。もはやお前がハルスを使いこなせるようになったとしても簡単に倒すことは不可能だ、そのうえ行動を共にする者がこのような未熟者で足を引っ張るようなことがあってはならんのだ」
(ラミル、僕はムーラの言う通りだと思うよ)
ラミルも本当は同じことを考えていた。
今は自分にも援護している余裕が無かったし、ロザイルの実力では足手まといになると感じ、ムーラに鍛えてもらうのが一番だと思った。
「わかりました、ロザイルを頼みます。ロザイル、腕を磨いて戻ってきてくれよ」
「わかった、ラミルすまない、ムーラ様、どうかお願いします」
「うむ、儂との修行は厳しいぞ・・・覚悟しておけよ」
ムーラはラミルに微笑むと、ロザイルを連れて南に見える山の方角へと歩いて行った。




