第四章 2
シチラに最も近づく辺りでは、草むらの中では身を屈めるようにしたり這ったりして移動し、隠れる物が無い時には目に見える範囲に人の気配を感じないことを確認して、急ぎ足や駆け足で岩や草むらの所まで移動した、そうやってなんとかシチラの者たちに見つからずにシチラから少し離れると、日が暮れる前に野宿する場所を探した、幸いにも適度に背の高い草が生い茂っていて身を隠せる大きな岩がある場所を見つけて、そこに荷物をおろした。
日が落ちるとまだ遠くにシチラの明かりがぼんやりと見えた、シチラがまだ近いことがわかる。
2人はシチラの兵が近くを通るかもしれないと思って火を起こさず、持っていた干し肉をかじり、近くに自生している柑橘系の果物を食べて空腹と喉の渇きを癒した。
少しだけ空腹と渇きが癒されたので眠くなる前にと思い、ラミルは疑問に思っていたことをロザイルに尋ねた。
「なあロザイル、きみは魔法とか呪文を習ったこととか、使ったことはある?」
「いや、そんなもの使えないよ」
「でも月の槍を手にしたんだ、その槍にも特別な力があると読んだことがある、だからロザイルもその力を使いこなせるようにならないといけないと思うんだ」
「僕もそれは気になっていたんだけど、ラミルの持っている本には何か書かれていなかった?」
健人はDarkを読んだときに魔法や呪文については何も書かれていなかったと思っていた、もしも何か書かれていたとしたら、大地の剣のことやハルスのことをもっと知っているはずだと思っていた、念のためもう一度Darkを開いて月明かりでムーラについて書かれているところを探して読んでみたが、やはりムーラの戦い方や槍の力については詳しく書かれていない。
(やっぱり、いくらムーラが書いた本とは言え、悪魔と戦ったことを誰にも話そうとしなかったラミルやムーラのことを考えたら、神器のことや呪文については書くとは思えないんだよな)
「以前、この本は全部読んだけど、確か魔法とか呪文については何も書かれていなかったと思うな、それに4人が神器をどんな風に操ったのかも書かれていなかった気がする」
「そうか」
「でも、ムーラが槍に込められた力を使ったことは確かだし、ロザイルの槍術の本にメッセージが現れたということは、なにか手掛かりはあるはずだよ」
「うん、明るくなったら僕ももう一度よく読んでみるよ」
2人は草むらに横になった、風が草を揺らす音以外、生き物の鳴き声すら聞こえない。
やがてロザイルは眠りについたのか、軽い寝息が聞こえてきた。
(健人、とりあえずウルトに行くことにしたけど、それで良かったのかな?)
(今は手掛かりが無いから何とも言えないけど、あのままウズルに居ても何かあるわけでもないし、シチラに近い場所にいつまでも居るとザギルと出くわすかもしれない。それに、あと2つの神器が敵の手に渡る前に見つけたいし、太陽の剣も探さなければならないからな)
(そうだな、ウルトで他の町や村のことが聞けるかもしれないし、アキュア、バールも人間だったのならば、ロザイルのように関係する人がいるかもしれないもんね)
(そうだね・・・ラミル、このあたりも魔物はいないみたいだから、少し眠って体を休めよう)
ラミルも目を閉じた。




