第一章 6
夕食は、クリシアの手料理が並んだテーブルを家族4人で囲んでいた。
「ラミル、最近学校はどうだ?力は強いかもしれんが、やはり勉強は苦手か?少しは勉強もしないと立派な大人にはなれないぞ」
「そうよ、ラミル、昨日も遅くまで起きていたみたいだけど、勉強していたわけではないでしょ」
「勉強は嫌いだよ、そんなのできなくても王宮の兵士にはなれるでしょ」
「今は王宮の兵士だって剣の腕前だけでは駄目みたいだぞ、父さんが兵士だった頃はそれでも良かったが、今は勉強もできないと駄目なようだ。兵士試験には合格したがろくに剣も握らせてもらえず、鍛冶場に他の兵士たちの剣の手入れを頼みに来る兵士だっているんだぞ」
「お父さん、お兄ちゃんは学校で一番強いんだよ、だから聖戦士様になれるもん」
「レイラ、いくらラミルが強くても、聖戦士様にはなれないよ」
ラシンドはレイラの頭を撫でて微笑んだ、ラミルもレイラを見て微笑んでいる。
「勉強しようとは思ってはいるけど、なんか覚えられないというか興味が無いというか」
少し俯いて照れくさそうに言った。
「でも今日は、突然誰よりも早く、算術の問題が全部答えられたんだよ、ジルやバルマも凄く驚いていた。それに昼休みには歴史の本を借りて読んだんだよ、王様と聖戦士様の話のところ」
クリシアが少し呆れた顔をした。
「聖戦士様の話なら昔よく話して聞かせてあげたのに、今頃になって興味をもったの?」
「興味をもったというか・・・本当はなんで本を借りて読んでいたかわからないんだけど」
ラミルも、体の中にいる健人の存在や、なぜ健人が歴史に興味を持ったのか理解できず、ラミルも健人の存在にかなり戸惑っていた。
「聖戦士様の話は作り話のような話だけど、アルムに伝わる本当にあった話よ」
聖戦士については母親の方が詳しそうなので、健人は入れ替わって話を聞いてみる。
「ねえ母さん、聖戦士様の話、もう一度聞かせてよ」
「もう本を読める年になったのだから本を読みなさい、あとで探してきてあげるから」
「他にもたくさん話があるの?」
「聖戦士様に興味をもったのなら良いことね、アルムの英雄だもの」
健人は英雄という言葉に余計に興味を持った。