第三章 27
ラミルとロザイルは、ジラルが数日間戻ってこないことに不安を感じていたが、シチラの町で騒ぎが起こった様子も無いので一旦ウズルの村に戻り、食料などの準備を整えて再びシチラ近くまで行こうと村のはずれまでやって来ていた。
「それにしても、ジラルさんは、うまくやっているのだろうか」
「おい、あれ、ジラルさんじゃないか?」
ロザイルが老婆を乗せた馬を引いてくるジラルを見つけると、ジラルも2人に気付いて歩を速めてラミルたちに近づいてきた。
「おかえりなさい、ジラルさん、そちらの方は?」
ハースに向かって2人の男が違う名前を呼んでいるのを聞いて、老婆は不思議に思った。
「おまえさん、ハースじゃないのかい、私を騙したのかい」
「エミルザさん、ごめんなさい。でも心配しないでください、この方は王宮の戦士ラミル、そしてこちらがバグロブに住んでいるロザイル、そして私の本当の名前はジラル、私も戦士です」
「戦士だって?」
「はい、実は・・・」
4人はとりあえず村長の家に行き、ラミルが何故旅をしているのか、なぜジラルが商人に変装してシチラに行ったのかをエミルザにわかりやすく話した。
「あなたたちの話はわかりました、私の息子アシドも元は王宮の兵士、その息子を殺した男が支配する町から出られただけでも、感謝しなければなりませんね」
「アシドだって?」
ロザイルが大声を上げ、村長もアシドの名を聞いて驚いている。
「どうしたロザイル?」
呆然としているロザイルの横で村長が口を開いた。
「アシドは殺されていたのか・・・いったい、いつの話しじゃ?」
「もう10年以上前になります、私の息子をご存知で?」
「儂の娘とアシドはザハールで出会って結婚しました。そして、このロザイルが産まれたのをきっかけに、シチラに近いバグロブ行きを命ぜられたらしいのです。バグロブに戻って来て、しばらくして仕事も生活も落ち着いたし、故郷の近くに帰ってきたからのだからと言って、あなたに会いにシチラに行ったのですが、それから何年たっても戻ってこなかった。そうでしたか、殺されてしまっていたのですか・・・アシドを待ち続けた儂の娘も、昨年病で死んでしまって、ロザイルは1人でバグロブに住んでいるのです」
「エミルザさんが僕のお婆さん・・・」
エミルザはあまりの偶然に驚いたが、初めてみる孫を力強く抱きしめると、どことなく息子の面影が残る顔をじっとみつめ、声を上げて泣き出した。
「エミルザさん、お嫁さんには会えなかったけど、お孫さんには会えて本当によかったね」
「ハース、いやジラル様、ありがとうございます」
ロザイルはエミルザを連れてバグロブにある自分の家へと戻っていった。
ジラルもラミルに月の槍のことは何もわからなかったことや、シチラの町や男たちの様子、そして酔った男たちが話していたザギルの呪文のことなどについて詳しく話して、アバブへと戻っていった。




