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Dark  作者: 赤岩実
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第三章 25

 ジラルは町の中へと進んでいくと、この町が他の町とはあまりにも違うことに驚いた。

 歩いている男たちはアルムの兵士や戦士ではないが、皆が甲冑を身につけて剣や槍などの武器を持っていて、しかも男たちの目はあきらかに普通の人とは違う怪しい目つきをしている。

 広場のような場所に着いて馬から荷物をおろして商売の準備をはじめると、兵士らしき格好の男が近寄ってきた。

「おいそこの男、お前は何を売りにきた。肉はあるか、肉・・・」

「干し肉ならありますが、最近は魔物が増えたせいで、熊などの肉は手に入らないのですが」

「干し肉しかないのか?生の血がしたたるような肉が欲しい、なんならお前の肉でも良いぞ」

「わ、私の肉ですか・・・ご、ご冗談を」

「ははは、お前のような男の肉など食っても、うまくないだろうな」

 そう言って冷やかしたのかと思ったが、冗談なのか本気なのかわからないことを言いだした。

「ここでは干し肉や野菜を食う奴はおらんぞ、お前も男でよかったな、女だったら食われているぞ、はっはっはっはっ」

 そう言って大声で笑いながら立ち去ってしまった。

(本当なのだろうか、生の肉を食べるなんて・・・)

 そういえば辺りには女性の姿がまったく無いことに気付いた。

(本当に女性がいない、まさか本当に食べられてしまったのか?)

 食料以外の商品を拡げていたが誰も買っていくことはなく、ただジラルの顔をジロジロ見て通り過ぎるだけだったが、突然後ろから老婆に声をかけられた。

「そこの商人の方、この町で商売しても誰も買わんよ。この町の女は年寄りしかいない、しかもたった15人だけさ」

「え?他の女性は?」

「若い女たちは、子供も含めて皆、ガルディア様の屋敷に連れていかれてしまった。最近は町の男どもも目つきも何やらおかしいし、いったいどうしてしまったのか」

 少し離れた場所を通りかかった男が怒鳴るように声を掛けた。

「おい、婆さん、よそ者と何を話している、余計な話しなどするな」

「あ、いえ、何を売っているのか尋ねていただけです。商人さん、その干し肉をくれんか」

「はい、じゃこれ」

 老婆はお金を渡すと、ジラルのそばを離れて歩いていってしまった。

 ジラルは、こんな状況では月の槍のことを聞くどころか、町をうろついて探すことも出来そうにないと思っていた。

 結局、その後も誰にも話しかけられることはなく、老婆が買っていった干し肉しか売れないまま日が落ちたので宿屋を探してみたが、シチラを訪れる者がいないのか宿屋が1軒もない。

(しかたない、野宿か・・・さっきの広場の隅で寝るか)

 広場に戻り馬を近くの木に繋いで草むらの上に寝転んだ、少しウトウトとした頃、通りかかった男たちの声が聞こえ、ジラルは寝たふりをしたまま聞いていた。

「ウズルに返した男たちはどうなったかな?」

「しかし、ザギル様も凄いことを考えるな、呪文をかけて自分の家族を襲わせるなんて」

「しかも殺したところで目を覚ますようにして、それで自分のやったことを後悔して、自ら命を絶つように呪文をかけたらしいぞ」

 なんと恐ろしい呪文を使うのかと思った、ラミルにザギルが使ったという魔法のことを聞いていたが、それが本当に衛兵だったザギルの仕業なのかと思った。

「おい、あんなところに馬が繋いであるぞ」

「ああ、昼間の商人の馬だろう、放っておけよ」

「少しからかってやるか?」

 男が近づいてくる足音が聞こえたがジラルは寝たふりを続けている。

「おい、起きろ、俺様に売っているものを見せてみろ」

 ジラルはいかにも寝起きという感じでゆっくりと体を起こした。

「すみません、もう今日は店じまいなのですが・・・」

 わざと寝ぼけた声を出して男の顔を見ると、昼間ジラルをからかった男だ、少し酔っているのかジラルの胸もとをいきなり掴んだ。

「このやろう、俺の言うことが聞けないのか、本当に食っちまうぞ」

 男は顔を近づけ、酒臭い息を吹きかける。

(こんな奴なら簡単に倒せるのに・・・駄目だ、ここは大人しく・・・)

「す、すみません、何が必要なのでしょうか」

 そう言って馬のもとへ走っていって荷物を降ろしはじめると、もう一人の男がきた。

「おい、いい加減にしろ、そんな商人をからかってもしかたないだろう。もう行くぞ、お前も荷物を降ろさなくて良いからな」

 そう言って、男を連れていってしまった。

 その頃、ラミルとロザイルは岩場の陰に隠れたまま交代で仮眠をとっていた、今はラミルが見張りをしている。

(健人、やはり月の槍のことは、すぐにはわからないみたいだな)

(そうだね、町の中に転がっているわけではないだろうし)

(このあたりは魔物が出ないらしいから気長に待つしかないか)

 ラミルは暗闇の中に薄っすらと光るシチラの入口をみつめていた。

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