第三章 20
アンの酒場は盛り上がっている、仕事の終わった兵士たちも大騒ぎしている。
「ラミル様もお飲みになってください」
食事をしているラミルに、酔った兵士がからんできた。
「私はまだ子供ですし、お酒は飲めません」
「そうですね、まだお子様ですものね・・・」
馬鹿にしたように兵士は笑いながら自分たちの席に戻っていくと、近くにいた別の兵士が来た。
「すみません、ここの兵士は魔物が出たことをあまり深刻に受け止めていないのです」
「でも、私がエストから来る途中でも遭遇しましたよ」
「私は先日王宮からこの町に来ましたので、魔物の怖さも良くわかっています。しかし、この町に以前からいる兵士たちは、なぜかレミル様の復活を信じているのです」
「聖戦士の復活?なぜそのような話しを・・・」
「聖戦士は神の遣いと言われています、ですから魔物や悪魔が復活した今、神は再び4人をこの世に遣わしてくれると信じているのです。それに、このアンはレミル様が最初に現われた地と言われているので、この町は守られていると信じているみたいです」
「そうですか、神の存在は私にもわかりませんが、私も魔物の復活に関する手掛かりを探す旅をしているので聖戦士の話をよく耳にしますが、実際に復活するかどうかは・・・それにしても復活を期待し過ぎている兵士たちは問題ですね、体格的にもかなり鍛錬が必要だと思います。あれではいざという時に戦えないでしょう」
その言葉に兵士は苦笑いした。
「そのとおりだと思います、私もここに来て驚きましたが、鍛錬の時間は無いに等しいですから」
「なんなら私から王様に手紙でも書きましょうか?でもそれもなんか告げ口するようで嫌なのでやめましょう。いずれここの兵士たちの噂を耳にすれば、ジクーズ様たちも黙っていないでしょうし、魔物の攻撃が激しくなれば王宮から戦士が来ることになるかもしれませんからね」
店を出て散歩をしていると、偶然すれ違った老婆に話しかけられた。
「おお、レミルさまじゃ、ついにレミルさまが現れなさった」
(おいおい、なんだ、このお婆さん)
「あの、私はレミルではありません、確かに名前はラミルで似ていますが・・・」
「間違いない、レミル様が復活なさった」
手を合わせて、拝むように跪いている。
(ラミル、ちょっと待て、もしかして・・・またムーラか?)
(今度はこのお婆さんになっているって?まさか)
(いや、わからないぞ、ちょっと話しをしてみないか?)
「お婆さん、聖戦士様のことを何か知っているなら、少し話していただけませんか?」
近くの石に腰を下ろし、老婆の話を聞いた。
「このアンの町は、かつてジゼルが滅亡したときに多くのジゼルの者が流れてきた。その中にレミル様はいなかったらしいが、レミル様はジゼルの呪術者の中でも特別な存在で、髪は金色で青い瞳をしていたらしい、そなたも青い瞳をしておる、レミル様の生まれ変わりではないのか?」
(ラミル、俺たちがレミルの子孫だってことは言わない方が良いぞ、ややこしくなる)
「そうですか、確かに青い瞳ですけど、レミル様とは違いますよ」
「なんだ、そうか残念じゃ、魔物が出るようになって、町の外に出られなくてつまらなくてのう」
「私も魔物たちについて調べるための旅をしています、魔物たちが復活した原因を・・・」
「それはたぶん・・・王様の仕業じゃ」
「え?王様ですって?」
「アルシード王ではないぞ、ガルド王の子孫じゃ」
「ガルド王の子孫?」
「そうじゃ、ガルド王は追放されて水の街シチラに幽閉された、ガルド王はもちろん数年後に死んだが、ここ数年、その子孫が自分こそ本当の王の血筋だと主張し、アルシード王も困っていたようだしのう」
「お婆さん、今、水の街シチラって言いましたよね、水の街はウルトではないのですか?」
「ウルトも同じシチラ湖のほとりにあるが、昔から水の街と言えばウルトではなく、シチラのことじゃ、シチラの方が歴史も古い、おぬしは水の街をウルトだと思っていたのか?」
「はい、そう聞いていたので、でも良いことが聞けました、ありがとうございました」
「待ちなさい若いの、ラミルとか言ったの、シチラはここから西に行けば着くが、その格好でシチラに入るのはまずいぞ、さっきも言ったようにガルドの子孫が町の実権を握っていてアルムの戦士はおろか兵士すら1人もおらんそうじゃ」
「じゃあ、町はどうやって守られているのでしょう」
「それはわからん、だからこそ悪魔や魔物の復活はガルドの子孫の仕業だと言っておるのだ」
「そうですか、ありがとうございました、気をつけます」
老婆と別れて部屋に戻った。
(それにしてもあのお婆さん、シチラのことに詳しかったな)
(そうだね、でも水の街はウルトではなくシチラだったのか、おそらく侍従の人もガルドの子孫のことを知っていたからシチラの話をしなかったんだな、よし目標変更だ、シチラに行くぞ)
(でもその前に、この格好をどうするか考えないと・・・)
(それは、シチラに着く前に考えれば良いよ、なんか今日はいろいろなことがあって疲れた)
ラミルはすぐに深い眠りについた。




