第三章 19
それは、私が書いたものだ、レミルも私も、聖戦士の戦いを記録に残すことは本意ではなかったし誰にも話さなかったが、王宮や周辺の町では我々は神として語られ、まるで御伽噺のような書物が作られ、事実とは異なる話が広められてしまった。
サリアは結婚してワルムに移り住んでその御伽噺を聞き、我々に事実を問いただすために帰って来たこともあったが、レミルはそんな話はただの噂だ、嘘だと言い、サリアにさえ真実を話そうとはしなかった。
だが、レミルの死後、もしもレミルの言うように、私の魂が復活することがあったなら、レミルの子孫に渡さなければならない剣と、この石をどうやって渡せば良いのかを考えた。
悪魔との戦いを噂だ、嘘だと口を閉ざしてしまったままでは、子孫に真実を伝えることもできず、神などという事実と違ったことが後々まで伝わってしまうかもしれない。
だから儂はその書に真実を書き残し、死ぬ間際にサリアに全てを話して、この本をレミルの子孫が代々守っていって欲しいと願いを託した。
「そうですか、それからもう一つ、なぜ健人が僕の中に?」
健人もレミルの子孫だからだ。
「健人は僕の子孫?」
ラミル、残念だがお前の子孫に男の子は産まれない、健人は妹レイラの子孫だ、レイラもレミルの血を継いでいるから、髪や瞳の色などはレミル、そしてサリアによく似ている。
今から、千数百年後に健人が誕生するわけだが、またその時に悪魔が復活せぬよう、2人で力を合わせて倒してほしいのだ、また千数百年後に私が復活するのも困るのでな。
「なんか変な気分だな、僕も健人もレミルの子孫だなんて・・・ところで、森の主のことはご存知ですか?」
ああ、奴にはかわいそうなことした、まさかその剣を奪おうとする者が現われようとは。
「主に剣を託したのはあなたですか?」
そうだ、私がこのハサンの体を借りることになってすぐに剣を奴に預けた、まさかこの墓を掘って入れておくわけにはいかんからのう。
「神器は本当に祠に祀られていたのですか?」
間違いない・・・と言いたいが、剣だけはわからん、儂も本当のことはわからんが、おそらく剣だけは祀られることなく、レミルがジゼルに持って戻ったと思う。
魂が復活させられてすぐここに来て、あの家の残骸の下に隠されていた剣を掘り出し、あの主に預けておいたんじゃ、こんなところよりもあの泉の方が早くお前たちがたどり着くと思ってな。
「そうですか・・・」
年寄りの話しはこれで終わりじゃ、この術者の石を持っていき、悪魔を倒してくれ、これで私の役目を終わりだ、もう2度と復活することがないよう、くれぐれも頼んだぞ。
二人は立ち上がって握手をかわしてレミルの墓に一礼してその場を去ると、ラミルはアンに戻り、ムーラはエストの町へ帰っていった。




