第一章 5
健人は剣術の授業と聞いてラミルの腕前がどの程度なのか興味を持っていた、身長はもちろん健人よりも大きいのだが、その両腕は同じ年頃と思えないほど太く引き締まった筋肉が付いていて、上腕は健人自身の体の太腿より太いのではないかと思うほどで、ラミル以外の少年たちが全て痩せて見えるほどの体格をしていて、もちろん上体も足腰にも十分な筋肉が付いている。
この腕と体格なら多少重い剣でも使いこなしてしまうのだろうと思ったが、健人には重い剣を振りまわすことは出来ないと思い、他の子たちと同じように軽そうな剣を取ろうとしたら突然体が勝手に動いて一番重い剣を掴んだ。
授業が始まって先生が生徒の前に立った、もちろん鉄の剣で生徒同士が戦うわけはないと思っていたが単に先生の動きに合わせて型を真似るだけのようだ。
健人はラミルの実力を見てみたいと思った、さっき剣を取る時に体が勝手に動いたことを思うと、もしかしてラミルと入れ替わることが出来るのではないかと思ってわざと体を動かさないようにしていると体が自然と動きはじめた。
ラミルの動きは想像以上だった、剣を振り回す力強さはもちろんだが、一番重い剣をまるで体の一部のように操り、それでいて手首の柔らかさ、体のしなやかさもあり、その動きは鋭くて速くキレもある。
「相変わらずラミルは凄いよな、この学校であいつに力で敵う奴はいないよ」
周りの生徒たちが言う通り、ラミルの動きは生徒はもちろんのこと教えている先生よりも鋭くて速くそして力強くて良い動きだと思った、この体は相当鍛えられていると改めて感じた。
剣術の時間が終わって教室に戻ると、みんなが帰る支度を始めたので、たった3教科というか3時間ほどで学校が終わることに驚いた、次の休み時間に本の続きを読もうと思ってラミルと入れ替わっていたが、しかたないので先生に本を返して小屋から出るとレイラが駆け寄ってきた。
健人はレイラと歩きながら思い出した家のことや両親のことを確認するように話した、ラミルの家がある場所はサント村といい、父親のラシンドは学校と同じワルムの町にある鍛冶屋で働いている、母の名はクリシア、両親はとても優しいが勉強嫌いのラミルには最近とても厳しく、7歳になったばかりのレイラはとにかく兄のラミルが大好きなようだ、そして体の持ち主は15歳のラミルで、4人家族ということを思い出してきたというか頭の中に浮かんできて理解した。
健人は家に近づくと、剣術の授業の時のようにラミルと入れ替わってみようと思っていた、そうやってラミルと家族の会話を聞けば、この時代のことがもう少しわかるかもしれないと考えた。