第三章 17
兵士が言っていたようにシアドは近かったが、今にも壊れそうな小屋の残骸が残っているだけで、その中に入ることなど出来そうもなく、これと言って目立つ物もない。
(20年ほど前に滅んだというくらいだから、確かに荒れ果てているね)
(でも、あの爺さんはレミルの墓があるって言っていたよな、ひっそりと暮らしていたっていうし、レミルの墓もきっと目立たないんだろうな)
辺りを見回しても、それらしき物は見当たらない。
「どうやら、儂の話を信じて来たようだな」
「誰だ」
「儂じゃよ」
家の残骸の影から現われたのは、エストの町で話を聞いた老人だった。
「お爺さん、どうやってここに?」
「儂はエストでお前が来るのを待っていた、そしてお前は儂の話を聞いて、ここへ来た」
「まさか・・・騙したんじゃ」
「騙してなどおらん、まあ話を聞きなさい、ある人からお前に授ける物を預かっているのでな」
「ある人から授ける物?」
「ついて来なさい」
老人は、セラム山の方角に向かって、ゆっくりと歩きはじめた、ラミルはその後についていくと村はずれにある1本の木の根元で老人は振り返った。
「ラミルよ、そなたは左腕に腕輪をしておるな」
「え?あ、はい、確かにしています」
「お前の父ラシンドは、その腕輪について何か言っていなかったかな?」
「なぜ腕輪のことを・・・それに父のこと知っているのですか?」
「儂はお前が産まれたときからずっと見てきた。もちろん父も、母も、妹のことも知っておる」
「あなたは、いったい・・・」
「それは順をおって話そう、それよりもラシンドは何も言わなかったであろう」
「父が兵士だった頃に母からお守りとして貰った物だと言っていました。今度はお前が持っていき母に守ってもらえと」
「そうか、お守りか、まあラシンドにとっては、お守り程度にしかならんかもしれん」
「この腕輪が何か?」
「腕輪をはずして、そこに刻まれた紋章と、木の根元にある石を良く見てみよ」
ラミルは左腕から腕輪をはずし、紋章と見比べるようにじっくりと見つめた。
「同じだ・・・これは、いったい何の印なのですか?」
「これはジゼルの民の紋章、健人には家紋という言葉で説明すればわかるな」
「健人のことも知っているのですか?」
「それも後で話す。この紋章はレミルの紋章で、ここがレミルの墓だ」
「これが墓ですか?」
「そうだ、この石の下にレミルが眠っておる、儂が葬ったのだから間違いない」
「えっ?まさか・・・お爺さんは何歳なのですか?いったい何者なんですか?」
「まだ気付かんのか、そもそもお前たちが来るのを待っていたとか、腕輪のこと、お前の家族のこと、そして健人のことを知っているなんて、普通の人間にはできないことであろう」
「そうですけど・・・ということは神様?」
「神様ではないが・・・この老人、ハサンの体は借り物だ、儂の本当の名前はムーラ」
「ムーラ?あの聖戦士の?」
「そうだ、声にも聞き覚えがあるであろう」
「あっ、その声は」
「さて、正体を明かしたところで、順番に話をしていこうかの」
2人は木陰に腰をおろすとムーラは語りはじめた。




