第三章 15
夜になってようやくアンに到着し、疲れていてとてもシアドへ行ける状態ではなかった。
兵士に宿まで案内してもらいながら町の中を見ると、エストの女性が話していたように、町の住人は、今まで見てきたどの町よりも裕福な暮らしをしているようだ。
夜だというのにエストのように静まりかえることはなく、酒場からは大声で歌を歌っている男たちの声が聞こえ、歓声がこだましている。
人々が裕福なのは悪いことではないが、案内をしてくれている兵士もそうだが、この町の兵士たちは皆、他の町の兵士に比べて体格が良くなり過ぎていて動きが鈍そうだ。
「ここは本当に賑やかな町ですね」
「この町は、北にあるセラム山の恵まれた鉱物資源を採掘して生活している者が多く住んでいます、それらの鉱物は武器などに使用されるため一括で国が買い取っていますから、採掘場で働いている男たちはまとまった金を手にできるのです」
「確かに兵士の皆さんも、他の町の兵士の方々より・・・」
「魔物が出るようになるまでは、酒場で仲間と過ごす時間ばかり増えてしまっていて・・・」
(そんな言い訳は良いから、そんなに太っていたら剣術どころか走れないだろ)
「ところで、明日、シアドの村跡に行ってみたいのですが」
「シアドですか?馬で行けばすぐですが、あそこには何もないですよ、朽ち果てた家の残骸と、墓らしきものだけが残っているだけです」
「そうですか、わかりました、ありがとう」
「宿に着きましたよ、とてもお疲れのようですし、今夜はゆっくり休んでください」
部屋に案内されてすぐに兵士が出ていくと、ラミルはベッドに横になった。
(それにしても、なぜ突然あの竜巻が使えるようになったのかな、弾き飛ばされた時は本当に終わりかと思った)
(ラミル、君はあのとき何を考えていた?竜巻のことばかり考えていたんじゃないか?)
(うん、竜巻が出れば動きを止められるとか、どうやったら竜巻を出せるのかってね)
(もしかして、それがいけないんじゃないかな?)
(え、なんで?)
(僕たちは呪文を覚えたわけじゃない、今までは剣自体に特別な力は無かったし、自分たちの力だけでなんとかしようとしてきたけど、あの竜巻の力を知ってからは、それに頼ろうとした)
(確かにそうだけど)
(でも、本当にやられると思ったときは、2人ともやられてたまるかって必死になって、竜巻のことなんて忘れて自分の力で倒すんだって思ったよな、それがまた剣の力を呼んだんじゃないか)
(そうなのかな・・・)
ラミル、健人、お前たちはまだまだ剣の力を使いこなせていないようだな。
(あの声だ)




