第三章 14
ようやくアンの近くまで来た頃、ラミルの行く手を阻むかのように3頭の魔物が見えた。
(あれは、シリムを襲おうとした奴らと同じ魔物みたいだな)
魔物たちは風上から来るラミルと馬の臭いに気付いたのか、こちらを向くと叫びをあげながら突進してきた。
ラミルは急いで馬を降り、馬から離れるように走りながら剣を抜いて下段に構え、魔物を迎え撃つ体勢を整えた。
(あの竜巻は使えないみたいだけど、一度戦っている相手だし、やるぞ、ラミル)
ラミルは魔物に向かって走り出した、その懐に潜りこんで一気に仕留めようと思っていたが想像以上に大きな爪の攻撃が速く、ラミルの攻撃が大きな爪によって弾き返されると、魔物の懐に潜りこむどころか自分の間合いを取ることも出来ないほどの反撃を受ける。
(こいつら、前の奴よりも速い、気をつけろ)
(でも、前に戦ったのと同じ熊の魔物だよな、こんなに速く動けるなんて、魔物も進化するのか?それともこいつらも覚醒するのか?)
魔物は大きな爪を振り回すようにして次々と攻撃してくる。
ラミルはその攻撃を避けながら背後を取られないようにすることに精一杯で、自分の攻撃が全く出来ない。
(このままじゃやられるぞ、ラミル、なんとかしないと)
(わかっているけど速くて、なんとか相手の動きを止められれば、あの竜巻が使えたら)
ラミルは剣の力を頼ってしまっていた、しかし、どうやっても剣先に竜巻は現れない。
(ラミル・・・)
ラミルは防戦一方になってすっかり動揺していた、爪の攻撃を何とか受け止めたが、そのまま巨大な魔物に強力な力で振り飛ばされた。
やられる・・・そう思った瞬間、2人は叫んだ。
「ちくしょう、こんなところでやられるわけにはいかないんだ」
ラミルは右手にしっかりと剣を握り直すと大地の剣が眩いほどに緑色に輝き出した。
その光に目を奪われた魔物の動きが一瞬だけ止まると、その隙に素早く立ち上がった。
大きく深呼吸して剣に左手を添え両手でしっかりと握り直して下段に構え直すと、大きく距離を取って鋭い目をして魔物たちを睨みつけた。
「やらなきゃならないことはまだたくさんあるんだ、こんなところで魔物に負けてられるか」
ラミルは魔物を睨みつけながらじりじりと間合いを詰めていく、自分の間合いにきたと思ったところで止まると中段に構え直した。
(ラミル、落ち着け、冷静に相手を見るんだ、こいつらの動きは単純だ、腕を振り回して爪で攻撃してくるしかない)
(うん、わかった)
ラミルは健人の言葉で落ち着いて冷静を取り戻した、その瞬間、大地の剣の剣先にゴォーという音と共に大きな竜巻ができた。
魔物は竜巻を見て立ち尽くすようにラミルを見ている。
ラミルはゆっくりと上段に構え直すと竜巻の音がさらに大きくなって剣全体を包み込んだ、左足を力強く踏み出すと魔物に向かって剣を振り降ろした。
剣先から伸びた竜巻はさらに大きさを増していき、目の前にいた2頭の魔物を覆って完全に動きを封じた。
「こんなところで、おまえたちには負けられない・・・」
ラミルは竜巻を切り裂くようにもう一度力強く剣を振り下ろした、魔物の覆っていた竜巻は2頭を一瞬にして跡形も無く消し去った。
それを見ていた残りの1頭は狂ったようにラミルに襲い掛かってきた、しかし1対1となったラミルの敵ではなかった。
ラミルは魔物の攻撃を冷静に見切ると、その鋭い爪をかわして右前足を斬り落とした。
魔物は絶叫を上げて膝をつき、こちらを見て近寄るなと言わんばかりに暴れている。
(こいつももとは動物だろ、あまり苦しませずに早く楽にしてやろう)
ラミルは魔物の後ろに素早く回り込んでその首を落とした、その瞬間、今まで以上に大きな竜巻を使ったためか、この前以上の疲れを感じて膝をついて座り込んでしまった。
(手強かったな、どうやら魔物たちも進化しているのかもしれないな、主の言ったようにもっと剣の腕を磨かないと駄目だし、大地の剣の力を使いこなせるようにならないと)
(そうだな、悪魔兵も進化して強くなっていくとしたら到底僕たちに勝ち目はないよ、早く太陽の剣を探して力をつけないと)
ラミルはゆっくりと立ち上がると、ふらつく足取りでなんとか馬のところまで歩いていき、やっとのことで馬に跨った、今まで経験したことのないような疲労感に馬上ではその身をまかすようにぐったりと前屈みになり、馬で来ていて良かったと思いながら馬をゆっくりと進ませた。




