第三章 8
ラミルたちが森に入ってみると、昨日までは生い茂っていた木々はなぎ倒され、泉の傍には白い毛を自らの血で真っ赤に染めた大きな虎が息絶えて横たわっている。
「いったい誰が・・・あの巨大な主を倒せるなんて」
(おいラミル、良く見ろよ、胴体に剣で斬られた跡があるぞ)
(うん、僕でも懐に入ることができなかったのに、こんなに深い致命傷を与えるなんて、いったい何者の仕業だろう)
「昨日、ラミルが帰った後で森の入口に看板を立てた時は何も無かったんだが、警備をしていた兵士の話だと深夜に獣の雄叫びにも似た叫び声と、何かが落ちたような大きな音を聞いたと言うので明るくなって見に来てみるとこのありさまだ」
ラミルはゆっくりと主の体の近くにある泉に近づいた、昨日は澄んだ緑色をしていた泉が、森の主の血が混じって濁っている。
「誰がこんなことを・・・せっかく村のみんなが森を守る約束をしてくれたのに」
(俺たちでも爪を落とすのが精一杯だったのに、この主を倒すなんて人間の仕業なのかな?)
(おそらく普通の人間には無理だろうな、いくら体が大きくても、動きが速くても、あの爪の攻撃を無傷でかわして倒すことなんて不可能だ)
「絶対に許せない、ちくしょう・・・」
ラミルはやるせない気持ちで大声を上げた、その声は森の中に木霊し、同時にラミルの心に語りかけてくる声が響いた。
ラミルよ、私のことなど気にするな。
(主なのか?いったい誰がこんなこと・・・)
それは私にもわからない、そなたが約束を守り、村の者たちが森に入らないようにしたことはわかっている、しかし夜になって何者かがここに来て大地の剣を出せと言ってきた、人間は大地の剣の存在を知らんはずなのだが・・・
(僕が持っていったと?)
いや、それは言ってはいないが・・・今のそなたの力ではあいつには勝てない。
奴の体はそなたと同じくらいの大きさだったが、速さではそなたたちよりもはるかに速い。
(僕より速いって?)
(戦士の中でもラミルより速く動ける奴なんていないのに・・・)
ラミルよ、一刻も早く太陽の剣を手に入れるのだ、そして、人々と大地を守ってくれ。
(わかった、約束するよ。一刻も早く太陽の剣を手にいれてサントのみんなと、そしてあなたの仇を討つ、そして平和を取り戻してみせる)
頼んだぞ、ラミル、健人・・・
声が聞こえなくなると、ラミルは主の亡骸に向かって深々と頭を下げた。




