第三章 6
(今までの中で一番でかいけど、どうする)
(どうするって、薬草を手に入れるためには、逃げるわけに行かないだろ)
(まだ気付いてないみたいだから、今のうちに近づいて不意打ちするか)
「パキッ」
枝を踏み折った音で魔物がこっちを見た。
(しまった・・・気付かれた・・・)
「ガルルルル」
(やるしかない、いくぞ)
だが相手はすぐに違う方を見て、ラミルの方を見向きもしない。
(あれ?なんだ、こいつ襲ってこないぞ)
(おい、あいつの足元を見てみろよ、ねずみの死骸だらけだ、この血の臭いはねずみの死骸の臭いなんじゃないか?)
ラミルが魔物の周囲を見渡していると、突然、何者かの声が聞こえてきた。
お前たちは何者だ。
「えっ?僕はこの国の戦士だ」
なぜこの森へ来た。
「この泉の周りにしかないという薬草を取りにきた」
なんのために。
「魔物の毒消し薬を作るためだ」
嘘をつくな、お前たち人間は草木を刈り、森を荒らしているだけではないか。
「違う、荒らしているんじゃない、森の、自然の力を必要としているだけだ」
ならば、この変わり果てたねずみたちはなんだ。
「わからない、僕はそれを調べに行く途中だ」
お前たち人間の仕業ではないのか?
「違う、僕の母さんは何者かに殺された。その後、多くの人たちが魔物に襲われている。だから仇を討つため、そしてなぜ動物たちが魔物になるのかを調べる旅をしている」
調べてどうする?
「もしその原因が伝説にあったように悪魔なら倒す、封印ではなく倒す」
お前にそんな力があるのか、それなら見せてみろ。
魔物はその巨体を起こし、その大きな前足で襲いかかってきた。
その大きく研ぎ澄まされた爪の攻撃をまともに喰らったら終わりなので、ラミルは素早く動きまわり、なんとか攻撃を避けながらチャンスを窺う。
(このやろう、さっきまで偉そうなこと言っていたのに、結局僕たちを殺そうとしているぞ)
ラミルは怒った、今ここで死ぬわけにはいかない。
「うおおおおお」
ラミルは雄叫びとともに魔物にいっきに近づくと大きな爪を避けて剣を振り下ろした、腕に痺れるような衝撃が走り、なんとか剣先がその爪を捕らえて大きな音とともに巨大な爪が1本地面に落ちた。
「グオオオオオ」
魔物が雄叫びを上げた。
待て、ラミル、もうよい。
「なぜ、僕を知っている?」
そなたのことは知っておる、そなたの力を試したのだ、許してくれ。
「おまえは魔物ではないのか?」
私はこの森の主の虎だ。私はここでそなたの来るのを待っていたのだが、ある日突然、体が巨大化してしまい困っている、全ては人間のせいだと思っていたのだが。
「森の主・・・そうだったのか、あなたも悪魔が復活して、魔物化してしまったのですね」
人間は愚かなことをする。あの悪魔を再び解き放つとは・・・
「その悪魔の封印を解いたのが人間なら、あなたの言うとおり人間のせいかもしれません。でも僕はその悪魔を倒して、原因をつきとめたいのです」
よくわかっている。そなたが探しているのはその薬草だ、そこに生えているのは摘んでいって構わないから持っていきなさい、ただしそれ以上はこの森の薬草を取りに来てはならん、必要な薬を作り、残りを育て、もう森を荒らすのはやめてもらいたい。
「わかりました、必ず村人たちに伝えて約束は守らせます。ところで私がここに来るのを待っていたと言っていませんでしたか?」
そなたの使っている剣は儂の爪と当たって刃が欠けてしまったようだ、父親が仕上げた大切な剣のようだが、これから先の戦い、悪魔との戦いはその鋼の剣では勝てない。
泉の中を良く見なさい、剣が見えるはずだ、私はその剣をそなたに授けるために待っていたのだ、その泉の中から剣を取り出して持っていくがよい。
ラミルは薬草を摘んで袋に詰めてから泉の中を覗き込んでみると、その澄んだ泉の中に剣が浮いているのが見えた、さらに泉に近づいていくと剣の柄の部分が水の上に浮かび上がってきたので泉の中にゆっくりと入っていき、その柄をしっかりと掴んで剣を泉から引き抜いた。
剣は父が作った剣よりもやや長く、幅も広いが驚くほど軽い、柄の部分は初めて握った剣なのに既に手に馴染んでいるようなちょうど良い太さだ。
それは『大地の剣』だ。
ラミルは泉から出ると剣を鞘から抜いて目の高さに掲げてみた、すると剣はまるで泉の色が反射しているかのように緑色に輝いた。
そなたがまだ気付いていない力を覚醒させることが出来る。
「大地の剣か、ありがとうございます。それから、先ほどの約束は村の人に必ず伝えます」
頼むぞ、ラミル・・・




