第三章 1
ラミルはザハールを出て、その日のうちにザハールの隣の隣にあるというエストの町に着くことを目標に、まずは隣のカイルに向かった。
(ウルトまではかなり距離があるって言っていたし、途中の町や村にも戦士や兵士がいるから、それぞれの場所で何か情報を収集できるだろう)
(でも、やっぱり不安だな、昨日はあんな話をしたけど、健人がいて本当に助かるよ)
(あははは、戦士様がなに情けないこと言っているんだよ。もう決めたことだし、まずは水の街で待っているって奴に会うまで頑張ろうよ)
昼をわずかに過ぎた頃にカイルに着いた、カイルも高い城壁に囲まれている。
門番の兵士は、戦士のマントを着けているが見たこともない顔で、自分よりも若いラミルを見て不思議そうな顔をしたが、それでも丁寧な言葉遣いでラミルに尋ねた。
「すみません、許可証をお見せいただきたいのですが」
(許可証?戦士なのにそんなのいるのか?貰ってこなかったよ)
(なんか袋に入ってないのかなぁ)
侍従から渡された袋の中を調べてみると、お金の他に綺麗に丸められた布が入っていたので開いてみると、王様の直筆と思われる手紙のようなので、兵士に見せてみる。
各地の戦士と兵士に告ぐ
この者、アルム最強の戦士ラミルは、私の命により旅をしている。
この者の旅を妨げてはならない。
それぞれの町、村への出入りに全ての許可を与え、食事、宿を提供すること。
アルム国王 アルシード
王様の名前の書かれた手紙を見た兵士は、驚いてすぐにその布を近くの戦士に見せに行き、慌ててラミルのもとに戻ってきた。
「し、失礼いたしました、ラミル様、どうぞお通りください」
その手紙の布を返してもらって城壁の中に入ると、休憩中の兵士が町の中心を案内してくれた。
(凄いな、さすが王様、そういえば王様の名前はアルシードって言うんだな、初めて知った)
(ラミル・・・普通は王様の名前ぐらい知っているものじゃないの?)
(いいや、たぶんほとんどの人が知らないでしょ、学校で習わないし)
(習って知るものじゃないと思うんだけど・・・)
健人はあらためてラミルの勉強嫌いを実感した。
(それにしても町や村に入るのに、その都度この手紙を見せないといけないのは面倒だな、まだザハールに戻れるし、許可証を貰って来た方が良いかな)
(大丈夫だろ、商人たちは王宮で許可証を貰ってなかったみたいだし、この兵士に後で聞いてみよう、たぶん次の町に入る許可証ぐらい貰えるよ)
ラミルは兵士の案内でカイルの町を散策していたが、昼を過ぎていたので腹が減ってきた。
(健人、おなか減ったし、何か食べる場所を探そうよ)
(でも、さっきの手紙に食事も提供してくれるってあったよ)
(そうか、じゃさっそくご馳走になろうよ)
「兵士さん、すみません」
「はい、なんでしょうか?」
「いや、別に畏まらなくて良いんですけど、おなか減ったので、何か食べたいのですが」
「はい、かしこまりました、ご案内いたします」
(だから・・・硬いっていうんだよ、口調が・・・)
(健人・・・そう言うなって、兵士にとっては年下でも戦士は戦士、位は上なんだから)
(でもさ、なんか変な気分なんだよ、そういう階級社会っていうのに慣れてないから)
兵士の用意してくれた食事を済ませたラミルは、案内役の兵士と別れて再び町を散策した。
(隣のエストまではどのくらいあるんだろう、やはり暗くなる前には着いておきたいな)
(とりあえずここまでは魔物には遭遇しなかったけど、さすがに夜は危険だろうし、野宿はもっと危険だからな、町に入れば宿も提供して貰えるみたいだから、出来る限り明るいうちに移動して、夜は町で寝る方が安全かもね)
(そうだね・・・ところで、シリムに行った時に遭遇した魔物の中に、毒を持っている魔物がいたよね、あの時は毒にやられることはなかったけど、毒消しのような薬があるなら用意しておいた方が良いのかな?)
(そっか、ザハールの町では毒消し薬についてはあまり耳にしなかったね、まだまだ必要な物とかもありそうだから、先を急がずに、まずはこの町で色々聞いてみようか、それに王宮では思いつかなかった物も、できるだけ揃えておこうよ)
そう思いながら町の中を歩き回り、近くを歩いていた人に声をかけてみた。
「すみません」
「はい、なんでしょうか?」
「この町に薬を売っているお店はありますか?」
「どのような薬でしょう?」
「毒消しなんですけど」
「毒消し?なんの毒ですか?」
「魔物の毒なんですけど」
「魔物?魔物が出るって話は聞いたことがありますが、魔物の毒に効く薬なんて聞いたことが無いですね、たぶんこの町には無いと思いますよ」
「そうですか・・・」
「ここから南に行った所に、アバブという薬職人が多く住んでいる村があるのですが、そこなら作れるかもしれませんね」
(南か、少し遠回りになるけど、薬は手に入れておいた方が良いよな)
(そうだな、たぶん必要になると思う)
「アバブって遠いんですか?」
「馬ならすぐですけど、歩きでも、今から行けば夕方までには着けると思いますよ」
「そうですか、ザハールまで行くのとそれほど変わらないみたいですね、どうもありがとうございました」
ラミルは急いでアバブへ向かうことにして、兵士に道を聞いてアバブへ入る許可証を貰った。




