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Dark  作者: 赤岩実
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第二章 27

 ラミルは玉座の前に跪いている。

「王様、私は母とサントに住む人たちの仇を討ちたくて兵士になりたいと思いました。そして、ジクーズ様と出会い、ここで王様に認められて戦士となることが出来ました。戦士として王宮を守ることはとても大切な任務であることはわかっています。しかし、魔物が出現した今、誰かがその根源となる悪魔を倒しに行かなければならないと思っています。それが私に出来るかどうかはわかりませんが、私は母とサントの者たちの仇を討つことが、祠の壺を破壊し、魔物たちを呼び起こした者を倒すという戦士の役目でもあると思っています。ですから、どうか旅立つことをお許しください」

「そなたほどの力を持つ戦士がいなくなるのは惜しいが、母親や村の人々の仇を討ちたいという気持ちも良くわかる」

 そう言って、王様はラミルの目を見つめて考えている。

「仇を討ちに行くことを許そう。確かにそなたの言うように仇を討つということは祠を破壊し、サントを襲った者どもを倒すということだ、それは戦士として大切な役目でもある。ラミルよ、辛い旅になるかもしれんがアルムのためにやってくれるか」

「はい、必ずや」

「なんとも頼もしい返事だな。初めて会ったときからこうなることを期待しておったが、こんなにも早くその期待に応えようとは・・・それで、すぐに出発するのか?」

「明朝、出発しようかと思っています」

「そうか、ならば早速支度を整えるが良い、何か必要はないか」

「お願いがあります、戦士として旅をすれば街に入る許可などは不要だと思いますし、兵士たちの宿舎に泊まればお金は必要ありませんので、このまま戦士ラミルとして旅をさせてください。それから、キリア山の祠にも行くことがあるかもしれませんので、許可もお願いします」

「さっきも申したが、仇討ちと言っても戦士の役目を果たすのだから戦士ラミルとして行け、それからキリアは、破壊されたままだから入るのは構わんが、十分に気をつけるのじゃぞ」

「はい、ありがとうございます」

「それから、念のため金は持って行け、侍従の者に用意しておくように話をしておく」

「ありがとうございます、明朝出発の前にあらためて挨拶に参ります」

 そう言うと王の間を出て、ジクーズや他の戦士たちが鍛錬している中庭に向かった。

「ジクーズ様、皆様・・・」

「どうした?」

 ラミルは、自分を王宮に連れてきてくれたジクーズや他の戦士たちに、旅立つことを伝えた。

「そうか、おまえほどの腕前なら目的を達することができるだろう、必ず無事に帰ってこいよ、それまでは俺たちがこの国を守る、お前の分もがんばるからな」

「はい」

 ラミルは元気に返事をすると、部屋に戻って支度をはじめた。

(いよいよだな)

(うん、健人、これからも力を貸してくれよ)

(もちろん、僕だって君の力を借りているんだからお互いさまだ、これからも頑張ろうな)

 決意を新たに旅立とうとする二人の心に、あの声が響いた。


 月の力持つ者、水の街に眠り、お主を待っている。


(聞いたか、健人)

(うん、聞こえた、手がかりは水の街か、この国の地図も必要になるな、後で聞いてみよう)

(地図って?)

(そうか地図なんて無いのか、地図っていうのは、どこにどんな街や山があるかが書いてある絵のことさ、そっかぁ、この時代にはまだ地図なんて無いのか・・・そもそも水の街って何て言う町なのかもわからないけど、どうやって水の街へ行けば良いんだ?)

(実は、アルムにどんな街があるかなんて、僕もほとんど知らないんだ)

(誰かに聞かないとならないな、水の街か・・・)

 支度を終えて考えこんでいると、部屋に侍従がやってきた。

「ラミル様、王様からの品々が揃いましたので、お越しください」

 後について侍従の部屋に行くと、兜、鎧、盾など、いくつかの品物が用意されていた。

「こちらの品々をお持ちください。この兜、鎧、盾は王家に伝わるもので、戦士の方々が使っているものより軽くて丈夫なものです」

「えっ?このような大切なものを、よろしいのでしょうか」

「王様は『これらの物は、国のために旅立つラミルにこそ相応しく、王宮に飾っておくようなものではない』と仰っておりました、それとお金とキリアの許可書です」

「明日、出立前に王様に挨拶に参りますので、その時にお礼を言わないといけないですね」

「そうですね、私もこの盾と甲冑を見るのは久しぶりですが、王様の仰せのように飾っておくだけではもったいない気がします」

「それにしてもこのような大切なものを、絶対に目的を果たして戻らなければなりませんね」

 侍従もラミルの言葉に頷いている。

(ラミル、この人なら水の街のことを知っているかも)

「そうだ、ひとつ聞きたいのですが、水の街というのを知っていますか?」

「水の街ですか?遥か西のアルム王国のはずれ、湖のほとりにウルトという町があります」

「ウルトですか、そこは遠いのですか?」

「私は行ったことがありませんのでわかりませんが、ウルトに着くまでには、途中にいくつもの町や村があるはずで、恐らくウルトまで夜通し馬で走っても10日以上はかかるのではないかと思いますが・・・」

「そうか、それは遠いな・・・」

「ウルトに何かあるのですか?」

「いえ、別に・・・ただ聖戦士様の話で、月、火、水の力について読んだものですから、もしかして“水”に関係あるのかと思っただけです」

「そうですか、それでは馬もご用意しましょう」

「いいえ、歩いて行きます。馬は移動するには便利なのですが、餌の心配をしなければなりません、それに歩いて多くの街や村に立ち寄って話を聞けば、何か手掛かりがつかめるでしょう」

「そうですか、ではこれらを部屋へ運びますので、手伝っていただけますか?」

 ラミルは侍従と一緒に鎧や兜を部屋に運ぶと、早速身に着けてみた。

 その鎧には、左右の肩の部分にアルム王家の紋章が刻まれていて、色はやや金色に近い銀色で光の加減で違った色にも見える、実際に着けてみると自分の鎧より軽くて動きやすい。

(こんな良い物をくださるとは、よほど王様に信頼されたな)

(信頼されたかどうかはわからないけど、なんか今まで以上に使命感を感じるな)

(そうか、僕は早いとこ片付けて、自分の住む世界に帰れればいいなぁ、とも思っているけどね)

(健人・・・まあ、その気持ちはわからなくもないな・・・俺も早く1人になりたい・・・)

(あっそう、なんなら1人で頑張りますか、ラミルさん)

(えっ、そんなこと言わないでよ)

(嘘だよ、だって僕の意思では、ラミルの体からは出ていけないんだから)

 2人は互いの緊張感をほぐすように冗談を言い合って笑った。

 翌朝、王家の甲冑と盾を身につけて王様と王子に接見した。

「ラミルよ、その甲冑、似合っておるな」

「このような大切な物を使わせていただき、ありがとうございます」

「良いのだ、そなたのような勇者にこそ、その甲冑はふさわしい」

「では、行ってまいります」

「頼んだぞ、必ずや原因をつきとめ、母やサントの者たちの仇を討ち、平和を取り戻してくれ」

 レミルは玉座に向かって深々と頭を下げると、戦士のマントを身につけ、西にあるという水の街ウルトを目指して旅立った。


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