第二章 26
「みんな、戦士様がこっちに来るよ」
校庭で遊んでいた生徒が、馬に乗って来る戦士の姿を見て声を上げた。
それを聞いた男の子たちが一斉に校庭に出てくる、戦士はアルムの男の子の憧れの存在だ。
1人の少年が、近づいてくる戦士がラミルだと気付いた。
「おい、あの戦士はラミルだぞ、あいつ、戦士様の格好をしているぞ」
戦士の格好をしたラミルを見て、生徒だけでなく先生までが不思議そうな顔でラミルを見る。
ラミルは馬から降りてマントを取って先生たちに向かって頭を下げて挨拶すると、この前まで生徒だったとは言え、戦士の恰好をしたラミルに先生たちも頭をさげる。
「戦士に・・・まさか王宮の戦士になったのか」
「はい」
「そうか、兵士ではなく、戦士になれたのか、それは凄い、立派になったな」
「ありがとうございます」
ラミルは少し照れくさそうにみんなを見ている。
「お兄ちゃん!」
ラミルが来たと聞いてレイラが駆け出してきた、抱き上げると嬉しそうにラミルを見ている。
「お兄ちゃん、兵士になったの?凄くかっこいいね」
「レイラ、お兄ちゃんは兵士じゃなくて、戦士様になったんだってさ」
ジルが声をかけるとレイラはさらに目を輝かせながら、まるで自分のことのように自慢そうな顔をした。
「凄い、お兄ちゃん凄い、戦士様だ」
ラミルもその笑顔を見て、ほっとした笑顔を見せたが、すぐに真剣な眼差しに戻る。
「レイラごめんね、あまり長く一緒にはいられないんだ。これから父さんに会いに行くから、お前も一緒に行こう。先生、すみませんが、レイラを連れていきます」
「わかりました」
ラミルは先生たちに頭を下げると、馬に跨ってレイラを抱えあげ、父のいる店へ向った。
店に着いてレイラを降ろすと、レイラは慌てて父のところへ走っていった。
「お父さん、お兄ちゃん帰ってきた」
「えっ?ラミルが帰ってきた?」
ラシンドは慌てて外に出てみると、そこには戦士のマントを纏った息子が立っていた。
「ラミル・・・おまえ、まさか兵士じゃなくて戦士になったのか?」
ラミルは王宮に行ってからの出来事や、シリムでの事などを父に話した。
「父さん、そろそろ前に話したレミル様の剣を探しに行こうと思うんだ」
「そうか、いよいよ行くか」
「だから今日はサントに行って家を見てきた、勝手に地下室に入っちゃったけど、そうしたらこれを見つけたんだ」
地下室で見つけたお金と、箱に入った腕輪を見せた。
「これ、母さんの形見でしょ、これしか持ってこられなくて」
ラシンドは腕輪を見て昔を思い出し、そしてラミルの顔をしっかりと見つめた。
「ラミル、この腕輪とお金はお前が持っていきなさい」
「でも・・・」
「この腕輪は昔、父さんがまだ兵士だった頃、母さんがくれたお守りなんだ」
「お守り?」
「お前が産まれる前のことだが、母さんが無事を祈ってくれたものだ。だから今度はお前がこの腕輪を着けて、母さんに守ってもらいなさい」
ラシンドはラミルの左腕にその腕輪を着けた。
「お金も、これから旅に出るのなら必要だろう、レイラと2人だけなら、ここで貰える給料で生活できる、それにわずかだが王様からサントの皆にお金が貰えたからな」
「でも・・・」
「持っていきなさい、そして必ず母さんや皆の仇を討って帰ってきておくれ」
ラミルは涙を堪えて父親の体にしがみつくと、覚悟を決めた。
「レイラ、わかっているな、父さんの言うことを聞くんだぞ、兄ちゃんは必ず帰ってくるから」
レイラは少し悲しそうな目をしていたが、抱き上げてレイラに向かって優しく微笑んでから父に託し、マントを着けて馬に乗ると、もう一度レイラとラシンドを見て頷いてから馬を走らせた。




