第二章 25
あの日の朝、学校へ向かうために家を出てからサントに戻るのは約1ヶ月ぶりだ。
サントにはもちろん人の気配は全く無い、多くの家々の残骸はそのまま残されていて、その所々には血の跡のような黒いしみが残っている。
(確かに酷いな、とてもじゃないが人が襲ってきて壊したにしては酷すぎる、大勢の人でやったとしても、ここまでは酷くはないと思うな)
(そうだね、それに火で燃やされた跡みたいなものが無いから、あの黒い雲みたいな物はいったい何だったんだろう)
(やはりただの人の仕業じゃない気がするな・・・)
村の家々はあまりにも悲惨な状況になっていたが、ラミルの家はまだ形が残っている方で、ラミルは慎重に崩れそうな残骸の中に入った。
もちろんクリシアの姿は無く血の跡なども無いが、台所には食器などが散乱している。
自分たちの寝室の屋根は無くなっていて、レイラがよく遊んでいた木製のおもちゃや自分とレイラの服が散乱し、2人が寝ていたベッドは瓦礫の下敷きになっている。
Darkはベッドの下に入れていたのでベッドの上や周りの瓦礫を片付けていき、わずかに出来た隙間からベッドの下を覗いてみた、暗くてよくわからないが本のような物が見えたので、近くにあった棒を使って少し引き寄せてみると、Darkはあるようだが、これ以上は手が入らないし何かに引っかかっていて取れそうもない。
「もうちょっとなのに・・・」
そうつぶやいて、もう少し瓦礫をどかしてから手を伸ばしてみるとわずかに本に触れ、引きずるようにして手繰り寄せて掴み出すと埃まみれになっているが間違いなくDarkだ。
(あったぞ、健人)
(良かった、これさえあれば、何か手掛かりを教えてくれる気がするんだ)
すぐに埃を掃って裏表紙を開いてみたが、現われた文字は何も変わっていない。
(だめか、思い違いだったのかな、でもこの本があれば、きっと何かある気がするんだ)
(僕もそう思う、それから、実はこの家には地下室があったんだ。食料などを保管しておくものだったみたいだけど、父さんは大切なものをしまっていたみたいだから、もし入れそうなら入ってみないか?)
台所のあった場所に戻り、散乱した食器やテーブルなどをどかして地下室の蓋を開けた。
中は多少の荷物の散乱は見られるものの、崩れそうにはなってはいないので梯子を使って下りてみると、わずかに光が差し込み、薄暗さにもすぐに目が慣れてくる。
食料などは無く、近くに置かれた木箱の中には、ラミルが幼い頃にラシンドと遊んだおもちゃの剣や、ラシンドが兵士だった頃に使ったようなガラクタが詰まっている。
(こんな物が大切な物なのかなあ)
(大人の考えは良くわからないから・・・)
ガラクタの入っていた箱の横に、青白く輝く小さな宝箱のような綺麗な箱を見つけた。
その箱を手に取って開けてみると、父が母にプレゼントした物だろうか、金属で出来た美しい彫刻の施された腕輪と、今まで貯めていたと思われるお金が出てきた。
(腕輪は母さんの形見じゃないか、お金と一緒に父さんに渡そう)
(そうだね・・・)
もう一度見渡してみたが、他には特別大切な物は無さそうなので地下室を出ると、台所や寝室をじっと見つめた。
(もうここに帰ってくることは無いのかな・・・)
(僕たちが悪魔を倒して平和になったら、また誰かがここに家を作って住むことになるのかもな)
(もう一度ここで母さんたちと暮らしたいな・・・)
ラミルは寂しそうに言ったが、健人は何も言わなかった、そして形見と思われる腕輪の入った箱とDarkを持ってサントをあとにした。




