第二章 19
玉の間には既に続々と戦士と20名ほどの兵士が集まってきていた。
王様は玉座に座ったまま、深刻な顔でやや頭を垂れて考え事をしている。
ラミルは王の間に入ったものの、少し遠慮して兵士たちの後ろに立っていたが、後から入ってきたジクーズに連れられて玉座の目の前に他の戦士と共に並んだ。
やがて全ての戦士が集まると、王様は顔を上げてゆっくりと立ち上がった。
「皆の者、キリア山、サントに続き、今度はシリムの近くで魔物が出たという報告があった」
「人ではなく、魔物だって?」
兵士たちの間でどよめきが起こった。
「すでにシリムは魔物に襲われているかもしれん、ジクーズ、アルノ、ハスバル、ラミルは、直ちに準備を整え、兵100人を連れてシリムへ向かえ」
「ラミル?」
ジクーズとラミル以外の戦士たちが一斉にラミルを見て、アルノが口を開いた。
「王様、お言葉ですが、このような未熟者は足手まといになります」
王様は黙っている、するとアルノはラミルに向かって言った。
「ラミル、お前は来なくて良い、実戦経験の無いお前では足手まといだ、アバス、お前が来い」
「アルノ、勝手なことを言うな」
王子が口をはさんだ。
「これは王の命令だ、ラミルよ、他の3人と共にシリムへ向かえ、良いな」
ラミルもいきなりの出撃命令に戸惑っていたが、王様の命令という言葉に素直に頷いた。
「はい、かしこまりました」
ジクーズ、アルノ、ハスバルは立ち上がると出口に向かい、ラミルも急いで3人の後を追って王の間から出た。
部屋へ戻る廊下でアルノはジクーズと並んで話をしている。
「ジクーズ、なぜ王様に言ってくれなかった、ラミルは学校も出ていない未熟者ではないか、確かにザギルに勝ったかもしれんが、実戦経験の無い者を連れていって足手まといになっては俺たちも危険だ」
「誰だって最初は実戦経験など無いさ」
ジクーズもラミルを連れていくことに迷いはあった、しかし、ラミルに期待しているという王様の言葉を思い出し、もしかしたらラミルの強さを他の戦士や兵士たちに示す良い機会になるかもしれないとも考えていた。
「しかし、戦士は兵士時代に実戦経験を積むだろう」
「最近は平和だったから戦士の中でも十分な実戦経験の無い者もいる、実戦経験で言えば我々だって豊富とは言えない。まして相手が魔物となれば実戦経験のある者など1人もいない」
ジクーズの言葉にアルノは黙ってしまい4人はそれぞれの部屋に戻ると出撃準備に取りかかり、ラミルも急いで支度を整える。
(健人、いきなり出撃なんて、なんか不安だよ)
(大丈夫だよ、王様だって何か考えがあって選んだはずだ)
(そうだろうけど、始めての実戦だと思うと不安だよ)
(それは僕も同じさ、でもきっと他の戦士だって最初は同じ気持ちだったはずだし、ジクーズ様も魔物との実戦経験など誰にも無いって言っていただろ、こうなったら焦ってもしかたない、まずはどんな魔物なのかこの目で確かめよう)
(なんか健人って突然熱くなるけど、こういう時ってすごく冷静だよな)
(それ、どういう意味?まあ事実だからしかたないけどさ)
ラミルは鎧を身に着けていたので剣の鞘を左腰の金具と皮の紐で固定し、兜をかぶって盾を手にして外へ出ると、兵士が手綱を持って用意されていた馬に跨って広場に向かった。
広場にはすでに多くの兵士たちが集まっており、すぐにラミル以外の3人の戦士も到着し、4人の戦士を前に出撃予定の兵士たちが集合すると、ラミルを始めて見る兵士たちは自分よりも若い戦士の姿を不思議そうに見ていたが、その中に学校でラミルと戦った兵士もいた。
(なんであいつが戦士の格好しているんだ?まさか兵士じゃなくて戦士になったのか?そんな馬鹿な・・・)
兵士たちのどよめく声を制するように、一番格上であるジクーズが馬上で叫んだ。
「皆の者良く聞け、シリムの近くで魔物が出たという報告があった、我々は魔物の退治と、シリムの兵士の応援に向かう」
「なお、称号を受けたばかりのラミルを含む戦士は4人だ」
その言葉に広場にどよめきが響き渡る。
「今回の指揮は私が行う、我々の手でシリムを襲う魔物を倒すぞ」
その掛け声にあわせて一斉に歓声を上げて剣を掲げた、先遣隊の兵士約30人がシリムへ出発すると、本隊はジクーズを先頭に、兵士の間に混じるようにしてラミル、アルノ、ハスバルが入った約70人が隊列を組み、先遣隊から少し間をおいて出発していった。




