第二章 17
ラミルは侍従に連れられてザハールの町へ出た。
サントとワルム以外の町を見るラミルにとってはとても新鮮で、町には多くの店があり、その店先には沢山の品物が並んでいて賑やかで活気がある。
「これがザハールの町ですか」
「はい、もともと一番古い町ですが、王宮がありますので品物だけでなく他の町から人も集まってきます、昼だけでなく夜もとても賑やかですよ」
あちらこちらで兵士の格好をした人をみかけるが、戦士のマントを着けている者はいない。
「戦士の方々は町にはあまり出てこられないのですか?」
「今は祠やサントのことがありますから、王宮で待機なさっておられるのでしょう。兵士たちは見回りや、それぞれの用事のために町に来る者も多いです」
(それは雑用係ってやつか?)
(なんだよ、その雑用係って)
(父さんが言っていただろ、勉強できない兵士は剣も握らせてもらえず、雑用やらされるって)
(ああ、そんなこと言っていたよな、でもちゃんと腰に剣を着けているよ)
(あれは見回りじゃないか、あっちの奴は剣を持ってないぞ)
「ラミル様、どうかなさいましたか?」
突然黙ってしまったラミルに侍従が声をかけた。
「あっ、いえ、なんでもありません」
「ラミル様、こちらへ」
侍従はラミルを店の中に案内すると、戦士としての正装用の服を用意してもらった。
その後も数軒の店を回り、鎧、盾など身の回りの全ての物を揃えてもらって王宮に戻ると、戦士だけに許されているという専用の部屋に案内されてラミルはようやく一人になれた。
(それにしても疲れたな、さすがにあの衛兵は強かった)
(健人、ありがとう)
(別に僕だけの力じゃないさ、ラミルの鍛えられた体と実力があるから勝てたんだよ、でもまさか戦士になれるとは思ってなかったな)
(うん、でもこれで旅立つ準備ができたよ)
(そうだな、でもラミル焦るなよ、気持ちはわかるけどせっかく王宮に入れることになったんだ、専用の部屋までもらえたんだから、まずは書庫で調べることがあるだろ)
(そうだね、すっかり忘れていたよ)
(もう少し聖戦士のことや歴代王について調べる必要があるし、もしかすると悪魔とか魔王とか、壺や剣のことなんかもわかるかもしれない)
(そうだな、まだ太陽の剣がどんな剣なのかもわかっていないし何の手掛かりも無いんだ、それに探すにしてもどこへ行けばいいかもわからない)
(そうだよね、まずは正式に戦士になってからだ、早く支度しないとまずくないか)
(そうだ、急がないと遅刻しちゃう)
ラミルは着ていた服を脱いで部屋の隅に用意された水で汗を拭うと、今まで着たこともないような服に袖を通し、用意された鎧を身に着けた。
(やっぱり鎧って重いな・・・動きにくいや)
(でもしかたないよね、それを着ないわけにはいかないよ、戦士ラミル様)
(健人、からかわないでくれよな、俺だって実は恥ずかしいんだから)
支度を済ませると、緊張がほぐれて疲れが出たのか椅子に座ったまま居眠りしてしまった、 迎えに来た侍従に起こされて急いで王の間に向かうと、全ての戦士が集まったところでラミルの正式な称号授与と、王妃や王子も交えての簡単な晩餐会が行われたが衛兵ザギルの姿は無く、まだ若く学校も出ていない未熟なラミルが戦士になったと聞いて、ジクーズ以外の戦士からは冷たい視線を受けた。
その頃、ザギルは自分の部屋で腫れた顔を冷やしながら横になっていた。
「あんな小僧が戦士だと、王様はいったい何を考えているんだ」
ザギルは2度も倒されたあげく、顔を殴られたことをひどく根にもって苛ついている。
「あの小僧、今度はただじゃおかねえ、次はこの手で必ず殺してやる」
ザギルの心の中に憎悪という名の邪悪な気持ちが生まれていた。




