第二章 15
王様も最初は見たことの無いラミルの構えや動きに少し落胆していたが、次々と繰り出すザギルの鋭い攻撃をかわし、息を切らす素振りも見せないままザギルを見据えているラミルの目を見て、すっかり魅了されてしまい身を乗り出して見ている。
(いくら鎧を着けていないとは言っても体勢を崩すことなく、なぜあのような軽快な動きができるのだ、ザギルの動きは決して遅くはないが、どんどん当たらなくなってきている)
ジクーズもこの前と違うラミルを見て、ますますラミルの動きから目が離せなくなっている。
攻撃を剣先だけでかわすだけで、自らは全く攻撃してこないことに苛立ったザギルは、左手に持っていた盾をラミルに向って投げつけ、剣を大きく振りかぶった。
ラミルは軽々と盾をよけてザギルを睨みつけた。
その眼光の鋭さにザギルは一瞬怯み、剣を振りかぶったまま動きが止まると、それをチャンスとみたラミルが勝負に出た、ザギルが剣を振り降ろそうとするよりも早く間合いに踏み込むと、振り降ろしかかっていたザギルの剣を両手でしっかりと握った剣で受け止めてから力強く跳ね上げるように押し返し、その大きな体に体当たりして体ごと弾き返した、ザギルはたまらずよろけて後退し、ゆっくりと体勢を立て直してニヤリと笑った。
「なかなかやるな、幼いと思って油断していたが、本気を出す必要があるようだ」
(本気を出すだと、そこまで馬鹿にしていたのか、ちょっと頭にきた)
(でも、そのわりにはこいつ、だいぶ汗をかいているぞ、負け惜しみじゃないか?)
(どっちでも良いさ、ラミル、こっちも本気で行くからな、怪我はさせないようにしようと思っていたけど、ほんのちょっとだけ痛めつけてやる、次で決めるからな)
(えっ?健人、君も本気じゃなかったのかよ?まぁ良いや、任せた、でも大怪我はさせるなよ)
健人が剣を持つ両手を額の前に上げて上段に構えると、隙があると見たザギルは剣を右手にしっかりと握り、地面と平行になるように真横に構えて健人の胴をめがけて振り払うようにしながら踏み込んできた。
ラミルはあえて左斜めに下がってザギルの剣をギリギリのところで避けると、ザギルが振り切ったその右手首に兵士と戦った時と同じように剣を振り下ろして剣を叩き落とし、素早く剣を握り替えて刃が当たらぬようにし、体勢を崩して動きの止まったザギルの兜に真横から剣を叩きつけた。
剣が兜の側頭部、耳の辺りを叩く音とともに甲冑をまとったザギルが床に倒れて大きな音が響き渡ると二人の戦いを見守っていた全員がその音に驚き、倒されたザギルは驚いた眼でラミルを見上げた。
それでもザギルはすぐに立ち上がると落とされた剣を拾って構えなおした、兜の上からとは言え側頭部を殴られた衝撃で頬は瞬く間に腫れあがり、口の中も切れているのか唇の端には血が滲んでいる。
「小僧、やりやがったな、許さねえぞ、殺してやる」
怒りで顔を紅潮させ、大振りで剣を振りまわして迫ってくる。
ジクーズは勝負がついたと思ってザギルを止めようとしたが、王様はまだ黙ったまま2人の動きを見つめていて止めようとしない。
完全に頭に血が上って冷静さを失ったザギルは、もはや健人の相手ではなかった、その無謀とも言える突進をかわしてその背中を突き飛ばすと、ザギルは勢い余って前のめりに床に崩れ落ちち、それを見た王様が立ち上がって声をあげた。
「ザギルそれまでじゃ、もうよい下がれ」
ザギルは攻撃をやめたが、納得できないという表情をしている。
「お前の負けじゃ、実戦なら最初の一撃で右手を斬り落とされ、次の一撃で死んでおる」
無言のまま悔しそうな表情でザギルはゆっくり立ち上がると、王の間から出ていった。




