第二章 10
戦士や兵士たちが校庭から去っていくと、ラミルの勝利に校庭は興奮と歓声に包まれた、剣のぶつかる音に怯えて父の背中に隠れていたレイラは、ラミルに駆け寄って抱きついて喜んでいるが、その歓声の中でラシンドだけは、自分の息子の戦いぶりに驚愕していた。
レイラからも、そして同じ子供を持つ親たちからも、ラミルは学校一強いと聞いていた、しかしここまで強いとは思ってもいなかった、たったいま息子の戦いぶりを見るまでは、今の自分では息子にも勝てないだろうと思っていたが、恐らく兵士だった頃に戦ったとしても足元にも及ばないだろうと感じた、しかも学校で教わるのとは違う見たこともないあの剣捌きと動き、そして目で捉えることが出来なかったほどの速さ、もしかすると戦士でさえも簡単には捉えることが出来ないかもしれないのではとさえ思った。
ラミルは呆然としているラシンドのもとに行くと、わずかに息の上がった口調で言った。
「父さん聞いたでしょ?王宮へ連れていってもらえるかもしれないよ、だから剣を作ってよ」
「わ、わかった、でもそんな簡単には剣を作ることはできないから父さんの店へ行って、お前の体に合った剣を自分の目と体で選びなさい」
「それなら今すぐに行こうよ、戦士様も必要な物を準備しておくようにって言ってたし」
ラシンドは両手でラミルの肩をしっかりと掴んで、成長した息子の顔を見つめた。
ラシンドはラミルとレイラを連れて働いている店へ来ると、店主に事情を説明した。
「それは凄いじゃないか、その年で兵士に勝って戦士様に認めてもらえるなんて光栄なことだ。事情はわかった、私からのお祝いだ、どれでも良いから気に入った剣を持っていきなさい」
店主はにこやかに笑うと、剣が並べられている棚の前へとラミルを案内した。
「この棚にあるのは、ほとんどお前の父さんが仕上げたものだ、どれも素晴らしい物だから自分の目でじっくりと見て、触って、気に入ったものを選びなさい」
「はい、ありがとうございます」
店主とラシンドは近くの椅子に腰をおろし、レイラはラシンドの膝の上に座ってラミルが剣を選ぶ様子を眺めていた。
ラミルは棚に並べられた剣を1本1本手に取り、握った感触を確かめて3本に絞ると、今度は1本ずつ鞘から抜いて何度も試し振りを繰り返して1本の剣を選んだ。
「これが一番扱いやすくて良いと思うけど、父さんはどう思う?」
ラミルはラシンドに笑顔を見せると、ラシンドも店主も納得したように頷いた。
「さすがラシンドの息子だな、剣の目利きも優れているじゃないか」
ラシンドは照れたように店主に向って頭を下げるとラミルの選んだ剣を手にした。
「これは刃先も丈夫だし、硬めには仕上げていないから多少のことでは折れないだろうが、お前にはちょっと長いし重くないか?」
「平気だよ、これなら剣術の授業で使っていた剣よりも全然軽いし、軽すぎないぐらいの方が大振りしなくて良いと思う」
「そうか、それならお前にお祝いとしてくださるそうだから、これを持っていきなさい」
ラミルは店主に深々と頭を下げた、それを見ていたラシンドは、なんと逞しい息子になったのだろうと思ったが、兵士と戦った時のあの力はラミルの言っていたように本当に選ばれし者の力なのかもしれないとも思っていた。




