第二章 8
兵士は反応出来ないどころか一瞬のことで何が起きたのかわからなかった、頬に剣から発せられた風圧を感じ、その耳には剣がかすめた音だけが響いた。
(本人は気づいていないようだが、今の攻撃で本来なら兵士は顔を切られた、いや刺されたと言うべきか、実戦なら決着は着いたな)
その場にいた誰もがラミルの動きを捉えることが出来ていなかったが、ジクーズにはラミルの剣の動きがわずかに見えていた。
(あの速さ、戦士でも反応できる者が何人いるだろうか、あの少年は一体何者なんだ)
「こ、この小僧・・・」
兵士はますます頭に血が上ってしまった、王宮の兵士が学校も出ていない子供に負けるわけにいかないと思って渾身の力を振り絞って剣を振り上げると、ラミルの肩口めがけて振り下ろそうとした。
(もらったぁ)
健人はそう叫んで素早く横に動きながら剣先で攻撃を受け流すと、攻撃をかわされた兵士はわずかに体制を崩した。
健人は兵士が態勢を整える隙も与えることなく両手でしっかりと握りしめた剣を兵士の右手首付近に振り下ろすと、剣と鎧のぶつかる甲高い音が響いて兵士の剣は地面に叩き落とされた。
健人はすぐに右手一本に持ち替えた剣を、手首をくるりと返しながら体を弓なりにしならせ、まるで舞っているかのように動き、丸腰になった兵士の左首元に剣を寸止めしてみせた。
その動きはあまりにも速く、突きの時と同様に周りで見ている者には何が起こったのかわからず、兵士も首筋に剣を突き付けたラミルを茫然と見ているだけだった。
「そこまでだ!」
静寂を破るようにジクーズが声をかけると、大歓声が沸き起こった。




