第五章 18
その時、シチラ兵たちの後方で何やら奇声と炎があがった。
シチラの兵士たちが次々と炎に包まれていき、その奇声にザギルは後方を振り返った。
「何っ?炎だと、貴様たちはすでに炎の鞭まで手に入れたのか」
「えっ?炎の鞭だって、まさかラミルが最後の仲間を連れて戻って来たのか」
シチラ兵たちは動揺し、捕まっていた人質はその手から逃れた。
残ったシチラ兵たちは炎が放たれる方に向って応戦しようとするが、次々と強烈な炎に焼き尽くされ、次第に恐怖心を抱いてザギルの方に下がってくる。
「貴様たち何をしている、相手はたった1人ではないか、さっさと倒してしまえ」
ザギルは兵士たちを叱責したが、次々と燃えて灰になっていく兵士を見て、逃げ出そうとする者も出てきた。
「よし、今だ、フィード」
「ウォルテア」
ロザイルとナナは、兵士に気を取られているザギルに向かって同時に呪文を唱えたが、ザギルはその攻撃を素早くかわし、ザギルの後方の兵士たちが氷や水の力で動けなくなっていく。
ザギルはロザイルに向かって左手をかざしたが、ロザイルは再びフィードを使ってザギルになんとか呪文を唱えさせない。
「ナナ、気をつけろ、呪文を使うぞ、ザギルの目を見るな、呪文を唱えさせちゃだめだ」
ナナもロザイルに促され、ザギルに再びウォルテアで攻撃する。
「くそっ、2人同時に相手にしていては呪文も使えん」
ザギルの後方から、炎に包まれた兵士を鞭で払いのけながら少年が現われた。
「お前たち、この町で何をしている」
少年は叫びながら次々と兵士を倒し、ザギルに後方から鞭で攻撃した。
ザギルは、ロザイルたちの呪文の攻撃に気を取られていて少年の攻撃を避けきれなかった、なんとか直撃は避けたものの、右の肩口が燃え上がって一瞬怯んだのを見てロザイルとナナが再びザギルを攻撃しようとすると、今度は少年の鞭が2人の攻撃を遮った。
「な、何をする」
「余計なことをするな、こいつは俺が倒す」
「馬鹿なことを言うな、こいつは他の兵なんかと違うんだぞ」
「うるさい、お前たちの力など必要ない、この炎の鞭さえあれば俺は無敵だ」
ザギルはニヤリと笑い、近くにいたアルムの兵士に左手をかざして呪文を唱えた。
「しまった・・・」
それまでシチラの兵士と戦っていたアルムの兵士たちが、一斉に3人に向かって剣を構えると、ロザイルとナナは手も足も出ない。
少年は剣を向けたアルムの兵士に鞭を振るおうとしたので、ロザイルが慌てて少年を制する。
「やめろ、彼らはザギルの呪文で操られているだけだ、攻撃するな、殺しちゃだめだ」
「くそっ、卑怯な・・・」
3人はアルムの兵士相手に何もできないまま追い詰められていく、相手がアルムの兵士では呪文で攻撃することもできず、何とか気絶させることができればと隙を窺うがあまりにも数が多いためにどうすることもできない。
「どうだ、これでは手も足も出せまい、殺すか、殺されるかだぞ」
少年は再び鞭をアルムの兵たちに向って構えた。
「炎さえ使わなければ」
そう言って鞭を振り上げたとき、ロザイルが再び槍で制した。
「やめろと言っているのがわからないのか!相手はただの人間なんだ、悪魔兵じゃないんだ」
「炎を使わなければ気を失わせることはできるはずだ、邪魔をするなと言っているだろう」
「2人ともやめてよ、ウォルト・・・」
ナナは3人とアルムの兵士の間に水の壁を作って攻撃されないようにしたが、兵士たちはその壁に向かって攻撃を続けているため、いつまでも壁は持ちそうもない。




