第五章 15
以前よりだいぶ腕を上げたようだな。
だが、私に勝てなければ、光の石を授けるわけにはいかぬ。
さあ、勝負だ。
レミルが剣を抜いて構えた。
ラミルは再び剣を体の前で交差させると、瞬きをすることも忘れたかのようにレミルの動きに集中した、今回はレミルもラミルの動きをじっと見ている、どうやらレミルも前回よりはラミルを警戒しているようだ。
前回レミルと戦ったときはラミルもかなり疲労していて、相手の動きを見切ることが出来ても体が思うように反応できず一歩の踏み出しが鈍くなっていたが今回は違う、10人と戦ったが息ひとつ切れていないし足も軽い。
ラミルからゆっくりと間合いを詰めていくがレミルは全く動じる様子はない、ラミルもレミルとのギリギリの間合いで止まってレミルの動きを見つめる。
膠着状態となった、ラミルも決して焦っているわけではないが、なんとも言えない緊張感を味わっていた、レミルの間合いを確かめるためにラミルは半歩だけ踏み出すとレミルはすぐに反応し、それを見てラミルもすぐに半歩下がる。
(レミルも慎重だな、でも僕たちはもっと慎重に行くぞ、なんと言っても相手はレミルだからな)
(うん、でもいつまでも見合っていてもしかたないよ)
(こういう時は絶対に焦っちゃ駄目なんだ、焦った方が負ける。こっちが焦って仕掛けてくるのを待っているに違いない、だから焦らずに相手の動きを良く見るんだ)
(わかった、ここも健人に任せるよ)
どうした、攻めてこないのか。
それではいつまでたっても、勝負には勝てないぞ。
「一度目は、どうやって負けたのかもわからないほど一瞬で負けましたからね、何度も負けたくないですし、光の石を手に入れるためですから慎重になりますよ」
健人は、本当は瞬きすら隙を与えることになるのではないかと思うほど緊張していた、しかし相手を誘うように言い放った。
「そういうあなたはどうなのですか?私など相手にならないと思っているなら、攻撃してきても良いはずだと思いますけど」
そうか、ならば私から攻撃させてもらうとしよう。
レミルは突然ラミルに襲いかかった、剣の速さも踏む込みの速さも前回とは格段に違う。
ラミルは2本の剣を交差させて攻撃をなんとか受け止めた、力だけは負けていない。
(は、速い、さすがだな、でも力は互角と見た、行くぞ)
ラミルはゆっくりとレミルを押し返す、2本の剣で受け止めている分だけ力は互角ではなくラミルの方が上回っていた。
レミルは力で押されているのを感じて、急に後ろに下がってラミルとの間合いをとる。
(よし、力では負けていない、それならば勝機はある)
再びレミルはラミルを見た、単純な攻撃ではラミルを倒すことはできないと感じたのか、攻撃パターンを変えようと、右手1本で持っていた剣を両手で持った。
ラミルは、それを見て左手に持っていたロムの剣を放り投げ、レミルと同じように1本の剣を両手で持つと、だらりと肩の力を抜いて剣を下げた。
どうした、勝てないと思って、あきらめたのか
「そのようなこと、誰が言いましたか?構えを変えただけです」
ラミルも、健人の構えは勝負を捨てたと思うほどに肩の力が抜けていて、レミルの攻撃を避けられるとは思えなかった。
(健人、僕は君を信用している、でもこんな構え・・・)
(大丈夫、これだって立派な構えさ、実際に使ったことはないけど、練習したことはある)
レミルが剣を振り上げて踏み込んだ、さっきよりもさらに速くて鋭いが、体全体に無駄な力が入っていない健人の動きはそれを上回り、レミルの攻撃を紙一重でかわすと左手1本で持った剣を右手で押し出すようにしてレミルの胴めがけて振り切った。
健人は確かな手ごたえを感じた、レミルの姿が消え試練の間が静寂に包まれる。
「はあーっ」
健人は大きくため息をついて床に尻もちをついた。
(手ごたえはあったよな)
(消えたってことは倒したってことだろ・・・)
ラミル、そして健人、見事だ。
この私を倒せるようになっているとは、短い間によくぞここまで腕を磨いた。
それだけ2人の呼吸があっていれば、太陽の剣の力を使いこなせるであろう。
約束どおり光の石の隠し場所を教えよう。
再びシアドの私の墓に行け。
そして紋章の刻まれた墓石を砕くのだ、その中に光の石を隠してある。
「あの石の中・・・そうだったのか、わかりました、ありがとうございました」
太陽の剣は、力と光、技と雷、知と風が組み合わされて生まれる。
全ての腕輪を利き腕に集中し、太陽の剣を手にいれるがよい。
「はい、ありがとうございました」
ラミルはすぐに立ち上がって試練の間を駆け出ると、祭壇に向かってもう一度深々と頭をさげてから急いでジゼルを後にした。
(急いでアンへ行こう)
出来る限り馬を全力で走らせた。
ハンを過ぎる頃には陽が暮れて夜になってしまったが、木々の隙間からわずかに漏れてくる月明かりを頼りに、谷間の道を下り、明け方にアンを通り過ぎてシアドに向かった。




