第五章 12
翌朝、すぐに北へ向かった。
(なあ、セラムの祠じゃなくて、バイスの死の谷にあるという祠へ行くつもりだろ)
(うん、流行病で亡くなった人たちを埋葬したというなら、もしかしたらアーシャ様もそこに葬られているんじゃないかって思うんだ)
(確かにセラムの祠には歴代の王妃が祀られているような場所は無かったし、流行病の者たちのためだけに祈祷が行われたとすると、アーシャ様もそこに祀られていて、レミルもそこに何かを隠したような気がするよな)
(僕もそう思うんだ、そしてアーシャ様への指輪がその扉の鍵かもしれないって、健人もそう思っているんだろ)
(そのとおり、もし違っていたとしても、あの指輪には絶対何かあるはずだよ)
ハンへ向かう谷の道は狭くて馬をとばせないが、サザルからハンまではそれ程遠くないため、昼を過ぎた頃にハンの村が見えてきた。
(もう誰もいないんだよな・・・)
そこに人影は無く村は静まりかえっている、死鳥に荒らされたためかサーも、もう1人の老人の亡骸もない、馬に乗ったままで村を通り過ぎてさらに北へ向かうと村から出てすぐのところに小川に架けられた丸太の橋が見えた。
(あれか、よし降りてみよう)
馬を繋ぎとめて小川に架けられた橋を渡って細い山道をしばらく登っていくと、目の前を大きな谷が遮った、とても深く、肉眼では谷底を見ることはできない。
(深いな、ここへ亡骸を落として葬ったのかな)
(うん、それより祠は・・・)
辺りを見回すと、飾られてそれほど時間は経っていないが、すでに枯れた花が供えられた穴が見えた。
(サーたちが来た時に供えたものかな?どうやらあれが祠のようだ、入ってみよう)
祠の中にはわずかな光しか入らず中をはっきり見ることはできないが、入口近くに落ちていた蝋燭に火を灯して中へ入っていくと、かなり寒く、奥へ進むと凍えるほど寒くなった。
(寒いな・・・なんだ、この穴は・・・)
(これって作られた穴じゃなくて、自然に出来た洞窟みたいだな、もしかしたら谷底につながっていて、そこから冷たい空気が流れてきているかもしれない)
突然、奥から吹いてきた風で蝋燭が消され、辺りが暗闇に包まれると、女性の声が聞こえた。
ラミル・・・レミル様と私の・・・
女性の声はか細く、良く聞き取れない。
(もう少し奥へ進んでみよう)
ラミルは壁に手をついて手探りで洞窟を進んでいく。
ラミル、ラミルよ、レミル様と私の血を継ぐ者・・・こちらへ来なさい。
(おい、この声ってアーシャ様みたいだ、この奥に何かある、急ごう)
さらに奥へ進んでいくと、青白く輝く塊が見えた。
(何かある)
ラミルは青白い光を頼りに走って行き、その物体が何なのかわかった瞬間、驚いて尻餅をついてしまった、そこには全身を氷で固められた美しい女性、その顔はジゼルの王家の家に飾られていた絵と同じ顔をした女性が祀られている。
(これがアーシャ様・・・)
(おい、アーシャ様の右腕を見ろ、腕輪だ)




