第五章 11
まだ日も昇りきらないうちにラミルはジールを出ようとしていた。
「じゃあ行ってくる、ロザイルも無理するなよな、ナナ、ロザイルを頼む」
ラミルは2人を残して町を出ると、左手にレバル山を見ながら北を目指した。
(とりあえずサザルに寄ろう、アンよりもハンに近いし町の人も僕のことを知っているから、情報収集できるかもしれない)
(ロザイルはいないけど平気かな?)
(平気だよ、南の町で情報収集しているってことで)
(そうだね、まあなんとか誤魔化せるだろう、それに夜着いて朝出発となればエミルザさんに会いに行けないからね)
サザルへ向かうまでに幾度も魔物と遭遇したが、どれほど相手の数が多くても雷の剣とロムの剣の術を使いこなすことが出来るようになったラミルには動物の魔物はもはや敵ではなく、一晩は野宿することになってしまったが、その翌日の夕方にはサザルの村に到着した。
「ラミル様、以前は失礼しました、ロザイル様とは一緒ではないのですか?」
「ええ、ロザイルは南にあるジールという町で情報収集しています。私はこれから北へ向かわなければならないので1人なんですよ」
「そうですか、今夜はこの村にお泊りになりますか?」
「できればそうしたいのですが」
「それでしたら、私の家へどうぞ」
以前、ラミルをシチラの者と勘違いして襲ってきた男の家に世話になった。
「ところでラミル様はいったい何者なんですか?」
「えっ?突然?」
「あっ、すみません。実は以前ここに来た時にあまりにも強いので・・・あのロザイル様でさえ槍をかすらせることも出来ませんでしたし、どうしたらあのように強くなれるのかと思いまして」
「私は、学校を途中で辞めて兵士の試験を受けました。その結果兵士ではなく戦士になれたのですが、実際にはそれまでに実戦経験は一度もありませんし学校で教わった剣術だけでした」
「そんな・・・それだけですか?」
「学校では常に一番重い剣と盾を使って鍛錬はしていましたけどね、それ以外は何もしていません、それにラミル様って呼んでいただいていますが、私はまだ15歳です」
「えっ?15ですか・・・」
「老けて見えますか?」
「いいえ、戦士なのに若いとは思っていましたが、まさかそんなに若いとは・・・驚きました」
「ところで最近もウズルやサザルへシチラの者どもは来るのですか?」
「いいえ、最近はほとんど来ません。それに今まではウズルの向こうに魔物は出なかったのですが、最近はウズルの方でも魔物に遭遇するようになったらしいのです」
「ウズルの近くにも魔物?そうですか・・・」
「ところでラミル様は北へ行くとおっしゃっていましたよね?」
「ええ、北にハンという村があるのですが、ご存知ですか?」
「もうあそこには誰もいませんよ」
「えっ?ハンに行ったことがあるんですか?」
「ええ、あそこには定期的に食料を届けていたんです、でも先日行ったら誰もいなくて、しかも死鳥に荒らされたような何かの跡がありました」
「そうですか、シチラの奴らにやられたらしいとは聞いていたのですが」
「何も無いですよ、ハンに行っても」
「ハンの先へは行ったことはありますか?」
「まだハンに人が住んでいた時に、ロムという人の亡骸を死の谷へ葬るのを手伝って欲しいと言われて、ほんの少しだけ奥に行きました」
「死の谷へ行ったのですか?」
「はい、死鳥が舞っていて・・・なんてことを想像していたのですが、小さな祠があって、その祠の側で亡骸を燃やしました」
「祠?祠があるのですか?」
「ええ、なんでも昔ジゼルの国が滅ぶ前に流行病にかかった人を治すために祠を作って祈祷が行われたと言っていましたが、実際にはほとんどそこで亡くなってしまって、亡骸を葬るための祠だと言っていました」
「そうですか、死の谷へはどう行けばいいんですか?」
「ハンから少し北へ行ったところをバイス山に入っていきます。目印は小川に丸太の橋がかかっているので、わかると思いますよ」
「そうですか、どうもありがとうございます」
「死の谷へ行くのですか?」
「ええ、今は悪魔や魔物のことだけでなくて、ジゼルの民についても調べる必要があって、どんな些細なことも見て確認したいので・・・」
「そうですか、では今夜はぐっすり休んで気をつけて行ってください」
男が部屋を出ていくと、ラミルはすぐに部屋の蝋燭を吹き消した。




