第五章 8
「おい、お前、この泉に何の用だ」
「喉が渇いて、水が飲みたいだけです」
「水なら、この先にある村に行って飲め、ここには近寄るな」
「そうですね、あなたたちが入っているおかげで水も濁っていて飲めそうもないですね。ところで何を探しているのですか?」
「お前には関係ない、さっさとあっちへ行け」
「何よ、その言い方」
「うるさい、じゃまだ」
ナナは兵士に近寄ると、すかさず背後に回り込み、兵士の首に腕を巻きつけて力をいれた。骨の折れたような鈍い音と共に兵士が倒れ込み、泉に入っている兵士たちがナナに気付く。
「おい、お前何をしている、あっ、おい・・・」
残りの兵士たちが一斉に剣を抜いて泉から上がってくる。
「まずい、助けなきゃ」
「いや、もう少し様子を見てみよう」
「ラミル・・・」
「平気だよ、恐らくナナなら倒せるさ、危なくなったら助けに行けばいい」
泉から上がってきた兵士は足に濡れた布がまとわり付いて十分に動けないようだ。
ナナは兵士の剣を避けながら次々と投げ飛ばしていく、ただ投げ飛ばすだけでは起き上がってきて攻撃してくるため、ナナにも次第に疲れが見えてきたようだ。
「よし、行くぞ」
ラミルとロザイルが姿を見せると兵士たちが緊張した。
「まずい、ラミルだ、ロザイルもいる」
「お前たちに杖を渡すわけにはいかない、さっさと立ち去るか、ここでやられるか選べ」
「うるさい、ザギル様の命令だ」
ラミルは剣を抜いた、ロザイルも槍を構える。
「お前たち、俺たち2人相手に勝てると思っているのか?」
ロザイルはナナの側に行って兵士に槍を向ける、ラミルは両手に剣を持って兵士を見ている。
兵士たちは攻撃してこない、どうやらラミルたちを恐れているようだ。
「かかってこないなら、こっちから行かせてもらうかな」
ラミルが2本の剣を持ってジリジリと間合いを詰めていくと兵士たちは嫌って下がる。
「なんだ、怖いのか、それならさっさと消え失せろ、今なら命は助けてやるぞ」
ラミルの言葉に挑発されたのか1人の兵士が果敢に剣を振り上げてかかってきたが、2本の剣で軽々と兵士の剣を弾き飛ばすと左手の剣で胴を斬り裂き右手の剣を頭に振り下ろした、それは一瞬のことだったが、それを見た他の兵士は一斉に逃げていった。
「ナナ、大丈夫か?」
ロザイルが声をかけた。
「ええ、平気よ、でも・・・ちょっと出てくるのが遅いんじゃないの」
「ちょっと君の実力を見させてもらったんだ、それにしてもいきなり首の骨を折るとはな」
「だって鎧を着ているから殴ると手が痛いじゃない、あれが一番効果的なのよ」
「なるほどね。すごい実戦的だし合理的だな、そうだ、それよりも急いで杖を探そう」
「でも、本当にあるのかしら、奴らがたいぶ荒らしたみたいだけど」
3人が杖を探すために泉に入ろうとした瞬間、濁っていた水が澄んで杖が浮かんできた。
「えっ、あれって」
「杖だな、まさか自分から現れてくれるとは、やはり真の持ち主が取りに来たからか」
ナナが手を伸ばして杖を泉から取り出すと、杖は銀色に輝き出して水の杖がナナを持ち主と認めたようだった。
「よし、これで杖も手に入った、残るは鞭と僕の腕輪と石だな」
「もうここには用はない、とりあえず村へ戻ろう」
3人は急いでスプラにあるナナの祖母の家へ戻った。
「ほう、これがアキュア様の使っていた杖なのかい?」
「ええそうよ、他の人がいくら探しても見つからなかったのに私が泉に近づいたら杖の方から浮かんできたの」
「そうかい、本当に選ばれし者なんだねえ、それにしてもナナ、お前、言葉遣いがいつもと違うね、女の子らしくておばあちゃんはそっちの方が好きだよ」
「そう?」
「ラミルさん、ロザイルさん、くれぐれもナナのことお願いしますね」
3人は祖母の家で一晩過ごし、翌朝ジールへ向かうために村を出発した。




