第五章 6
しばらくして、3人の右手にアデル湖が見えてきた。
「ラミル、あれがアデル湖だよ」
ナナは嬉しそうな声をあげて、ラミルにつかまっていた右手を離して湖を指差した。
(ラミル~~~、たぶんナナはお前に惚れたぞ)
(えっ、まさか?)
(さっきの平手一発が効いたみたいだなぁ、ナナの顔は馬に乗ってから凄く嬉しそうだもん、さらに強いラミル様を見せたら完全に惚れちゃう~って感じだな)
(健人さん、もしかして僕をからかっているのですか?)
(いや、からかっているんじゃなくて、たぶん僕の勘は正しいと思うよ)
(あっそう・・・健人、どうやらそんなこと言っている場合じゃないぞ)
(どうした、なんかあったか)
(前を見ろよ、魔物だ、しかも毒を持っている奴ばかりだ)
(蛇に、蛾か・・・あれ、なんか新しいのもいるな)
「ロザイル、魔物がいるぞ、どうやら毒を持っている奴ばかりみたいだから注意しろ」
「毒?魔物って毒を持っているのがいるの?」
「ああ、とにかくこっちに気付いたみたいだから馬から降りるぞ」
慌てて馬から降りると、ラミルは剣を、ロザイルは槍、そしてナナは素手で構えた。
「ナナ、こいつらと素手で戦うのは無理だ、蛾の奴は羽から毒を出していて吸っただけでも毒が回ってしまうから触れるのは危険だ、とりあえず今は下がっていて」
「でも」
「大丈夫だよ、俺とラミルはこの程度の魔物には負けないから」
「いや、ロザイル、油断するな、新手の奴もいるぞ」
「ラミル、あいつとやるのは始めてか?あれは熊の魔物が進化したものらしい、毒は持ってないけど動きは速いし、爪が大きくて鋭いから注意なんだ」
「そうか、それならまずは一番やっかいな蛾の魔物を先に倒そう」
ロザイルはフィードを、ラミルはロムの剣とハスを使った。
蛾の魔物たちが一瞬で全て凍りついて砕け散り、ハスによって蛇の魔物も動けなくなった。
「よし、今だ」
ラミルとロザイルは二手に別れると、それぞれ蛇と熊を倒しにかかり、ナナは2人の様子をじっと見ている。
ラミルは右手に雷の剣を持ち、動けなくなった蛇を倒して、もう1匹の蛇を見た。
ロザイルは動きの速い2頭の熊を相手にしていたが、1度戦った経験があるため落ち着いて戦っている。
ラミルの剣が輝いた、振り下ろした剣から雷が飛んで蛇の体に当たると魔物は一瞬で燃えあがって灰になり、すぐさま熊の魔物に接近すると攻撃をかわして早く斬り裂いた。
ナナは2人の強さに驚き、あっという間に魔物を倒して戻ってきた2人に声をかけた。
「2人は本当に強いんだね、私はラミルたちの役に立てるの?」
「水の杖を使えるのはナナしかいない、僕たち2人だけでは悪魔を倒すことはできないんだ」
「でも・・・」
「ナナの力は必要だよ、まだ杖を持っていないから術の力に驚いているだろうけど、ナナも杖を手にすれば術が使えるようになる」
「うん・・・わかった、それじゃあスプラへ急ぎましょ」
3人はスプラへと急いだ。
(ナナはすっかり、しおらしくなったな)
(不安なんだよ、一度に多くの魔物に遭遇した経験も無かっただろうし、初めて毒を持つ魔物にも遭遇したみたいだからな)
(というか、やっぱりナナはラミルに惚れたな)
(またそういうこと言う?違うって)
(だってさ、今もしっかり捕まっている・・・というか、完全に抱きついているし)
(まぁ・・・ね・・・)
(それよりもロザイルは腕を上げたな)
(うん、相当ムーラに鍛えられたみたいだ、槍の腕前も術の使い方も上手くなった)
ラミルたちがアデルの山裾をスプラに向かっていると、後ろでナナが声をかけた。
「もうすぐスプラだよ、少しだけ山に入るから入口を見落とさないようにしないと」
「わかった、なにか目印はある?」
「目印は無いけど、あっ、あそこ、村へ続く道の入口」
少し山へ入るとすぐにスプラの村に着いた、まずはナナの祖母がいる家へ向かう。




