第一章 10
4人の勇敢なる者は魔王と闘い、王の体を操っていた悪魔をその体から取り出すと、聖なる壺に魔王を封じた、これにより魔物たちは元の姿に戻り悪魔兵は全て滅びた。
その後、王となってアルムを継いだ者はキリアの山に祠を造り、聖なる壺を太陽の剣、月の槍、水の杖、炎の鞭と共に祀ったという。
レミルが呪文を使うなら、学校で歴史として教えるには4人とも神の使途としたほうが都合良かったのかもしれないと思った、そして魔王と悪魔を別の存在とすることで、封印されたのは悪魔だけとすれば、王家の威信も保たれると考えたのかもしれない。
全てを読み終えて本を閉じようと最後の頁を見た瞬間、昨日見たときには何も書かれていなかった頁に文字が書かれているのを見て驚いた。
幾千もの時を越えて生まれし偉大なる勇者の末裔よ
扉を開けよ、邪悪なる闇を斬り裂き、民を、未来を救うのじゃ
突然現われた言葉を見て動揺している健人の心に、ラミルが呼びかけた。
(僕はラミルだ、僕の中にいる君はいったい誰だ?なぜ聖戦士や、この本に興味を持つんだ)
(そうか、こうして話をすることも出来るんだね、勝手に体を使ってごめんなさい。僕は健人、おそらく今から1000年以上の未来の世界から来たんだ)
(ケント?1000年以上の未来?)
(うん、その1000年以上未来の世界で僕は偶然にこの本を手にした、そしたら突然体の自由が効かなくなって気を失い、気がついたら君の体の中にいたんだ。そして、昨日この本を君のお母さんから見せられて、もしかするとこの本を読めば元の世界に戻る方法が見つかるかもしれないと思ったんだ、でもそれは無理みたいだから、ここに来た理由や、なぜ君の体の中なのかわかるかもしれないと思って読んでいたんだ)
それから2人は話し合った、ラミルもはっきりと見たという最後の頁に現われた言葉、それは健人が意識を失う前に見て聞いた言葉と同じで、何か深い意味があるのではないかと言うこと、そして健人のいた1000年以上も未来の話。
(君が言っていることをすぐに信じることは難しいけど、実際に君がこうして僕の中にいて話をしていることは事実だからな・・・ところで、突然算術の問題が解けるようになったのは君のせいだよね)
(勝手なことをしてごめん。それにしても剣術の授業は凄かったなぁ。腕も太いし、あんな重い鉄の剣を軽々と振り回すなんて、昔から鍛えていたんだね)
(勉強は苦手だけど、父さんは兵士だったから僕も小さい頃から剣術には興味があって、大人になったら兵士になりたいって思っているんだ)
(そういえば両親とそんな話をしていたよね、勉強しろと言われていたもんね)
(でも本当に勉強は嫌いなんだ、健人は勉強得意なんだろ、あんな簡単に算術の問題を解いてしまうし、本だってすらすらと読んで理解しているみたいだ)
(僕も勉強は得意というほどではないよ、ただ僕のいた世界よりも簡単だっただけさ、それに本を読むのが好きなだけだよ)
(ふ~ん、そうか)
(ところで・・・話は変わるんだけど、今はArum暦何年なの?)
(Arum暦253年だよ)
(253年?ということは、この本の話に書かれていることがあったのは、わずか250年ほど前のことなのか、かなり古そうな本だけどそれほど前に書かれたものではないんだな)
(よくわからないけど、この本は1冊しか残ってないって聞いたことがあるんだ)
(1冊だけ?そういえば、確かにお母さんが大切にしなさいって言っていたよね・・・もしかして1冊しか残っていないんじゃなくて、1冊しか作られてないんじゃないのかな)
思い出してみると、学校で使っていた本を見ても版画のような感じだったし、活字というより手書き文字に見えたということは、この本も印刷されたものではなく、神話のようなこの話を後世に残すために、誰かが書いたものと考えるのが正しいのではないかと思った。
そう思って再び本を開いて見てみると、薄明かりではわかりにくいが、インクのようなもので手書きされているように見えるし、所々の文字は擦れていて滲んだような跡もある、微妙に文字の大きさや形も違っている。
(ラミル、もしかしてこの本は君の先祖が書いたものじゃないか?)
(そうなのかな、もしかして僕は聖戦士に関係あるのかな)
(僕もさっきそんなことを考えていたんだけど、もしかしたらそうなのかもしれない、この本に書かれたレミルと同じく、レイラの髪は金色で瞳は深いブルーだし、それに君の瞳だってブルーだしね)
(そう言われると僕もこの本やレミルに少し興味が出てきた、君に協力するよ、明日からは先生にも話を聞いて、他に何か書かれた本がないかも調べてみようよ)
(ありがとう、それじゃあ少しだけでも寝ようか)
ラミルは蝋燭の火を落として横になった。




