第五章 2
翌日2人は早速エストに向かった。
昼間のエストはあいかわらず賑わっていて人通りも商人も多く、情報を集めるため何人かの商人に声をかけてみたが特に何も手掛かりはなかった。
「前に来たときもエストって人が多いと思ったけど、それにしても凄いな」
「初めてムーラに会ったのは、この町なんだ」
「そうなんだ」
「この広場にいて、聖戦士の本当の話をしてやるから酒代を恵んでくれとか言ってさ」
「ああ、そういえばムーラと一緒にエストに来たときに、知らないお婆さんに声かけられていたな、いつ帰ってきたんだって。それにムーラってもともとかなり酒好きなんじゃないかな?どこの町行っても夜になると酒場に行って飲んでいたから」
「そうなんだ、なんかムーラらしいな」
「こらっ」
突然後ろから怒鳴られた、振り向くとハサンの姿をしたムーラが立っている。
「あっ!なんでここに・・・」
「お前たちに手掛かりを伝えようかと思ってきたんだが、儂の悪口を言っているような奴らに教えるのはやめるかな・・・まあしかたない、あまり時間も無いからな」
「ごめんなさい」
「これからどこに向かおうとしているんだ?」
「とりあえずタンナに行って、ジールにも行ってみようかと思っています」
「それならちょうど良かった。タンナにナナという、とても気の強い女の子がいる」
「女の子ですか?」
「そうだ、でも女の子だと思って甘くみていると怪我するぞ。アキュアはもともと兄弟も恋人もいなかったから子孫はいないが唯一弟子と認めた男がいた。その弟子はアキュアの死後、その教えをもとに一子相伝の術を完成させた」
「一子相伝の術?それって呪術ですか?」
「いや、体術と言えば良いかな、武器は一切使わず、殴る、蹴るなど体を使って相手を倒す技だ」
(空手とか、柔道みたいなもんかな?)
(何それ?)
(今、ムーラが話していたようなもんだよ)
(ムーラに聞いてみようかな・・・)
(やめろよ、ロザイルは僕の存在を知らないんだから話しがややこしくなる)
「そして、そのナナは『水の杖』が持つ術を使いこなせるはずだ」
「え、杖を持っているのですか?」
「いや、ナナも探しているがまだ見つかっていない。儂も探しておるところだが何かわかったらDarkに示すことにする、まずはタンナに行ってナナと仲間になるのだ」
「はい、わかりました」
ムーラは何やら意味ありげな顔で、ニヤリと笑って歩いていってしまった。
「なんだ、あの笑い方」
「なんか嫌な予感がする・・・」
「ロザイル、何か知っているの?」
「ムーラがあの顔で笑うときって、修行中もかなり嫌な思いをさせられたんだ」
「ナナって気が強いって言っていたけど、前にタンナに行ったときに何か聞かなかったの?」
「タンナでは食事をして、すぐに出ちゃったからな」
「そうか、でもナナに会わなければならないなら、タンナへ行くしかない」
「うん、わかった・・・」
浮かない顔のロザイルを促して、タンナへ向かった。




