第五章 1
階段を登りきると雷の石の置かれていたセラム山の穴より少し大きめの穴が見えた。
(ここだ、ここに間違いない、母さんはここに僕を連れてきたんだ)
穴の中に入ってみると思っていたよりも中は広く、奥へと続く道がありわずかに光が差し込んでいて薄っすらと明るい。
(母さんは僕に何を見せたかったんだろう・・・)
(とりあえず箱か何か無いか探してみよう)
ラミルはゆっくりと歩いて見て回った、穴は数メートルほど進むと行き止まりになっていて、その壁にはレミルの紋章が彫られている。
(これはレミルの紋章だ、ここにもレミルは何かを残したんだ)
(でも、いったい何が・・・なんでわざわざここに残したんだ、ムーラに風の石を託し、セラム山のあんな穴の中に雷の石を隠して置いたのに)
(1箇所にまとめておいて、誰かに盗まれたら大変なことになると思ったからじゃないか)
(でもジゼルの血を継ぐ者でなければ使えないよな)
(ジゼルが崩壊して末裔たちは散っていっただろ、もしその中に過ちを犯そうとする者が現れて太陽の剣を手に入れたらどうなる?レミルはそれを恐れていたのかもしれないよ)
壁のどこかに箱が隠されていないか探してみたが箱を隠せるような穴も無い。
(雷の石のように、ただ埋められているものも無いみたいだな・・・)
ラミルは壁の紋章を見つめた。
「ここに何があるっていうんだ、母さんはこの紋章を見せたかっただけなのかなぁ」
そうつぶやいて右手で紋章に触れた途端、力の腕輪が共鳴して壁が崩れ落ち、壁の向こうに奥へ続く道が見えた。
奥は光が十分に届かないため薄暗いが、数メートルほど進むと箱が置かれているのが見えた。
(箱が2つあるぞ、腕輪と石かもしれない、開けてみよう)
1つ目の箱を開けてみると腕輪が入っていた。
(知の腕輪だ、この前の偽物とそっくりだな、今度は本物か?)
(石を嵌めてみよう)
袋の中から風の石を取り出して腕輪に嵌めて左腕に腕輪を着けてみたが今度は砕けない。
(おい、利き腕じゃなくていいのか?)
(知の腕輪は術を使うための腕輪だからな、とりあえず左の方が良いかと思ったんだ)
(確かに剣を持つ手で術は使えないけど・・・とりあえずは良いか)
もう1つの箱を手に取って開けてみる、中には細くて小さな指輪が入っている。
(この指輪・・・どうみてもレミルがしていた太さじゃないな)
(僕の小指でも入らないよ、あれ?指輪の内側に何か彫られているぞ、良く見えないな)
『レミルからアーシャへ』
(これって、レミルがアーシャに贈ったプレゼント、というか結婚指輪か?)
(何?結婚指輪って?)
(結婚するときに交わす誓いの指輪だよ、僕も理由は詳しく知らないけど)
(これがここにあるってことは、レミルはアーシャが亡くなってシアドに移り住んでから腕輪と指輪を隠しに来たみたいだな)
(この指輪もセラムの鉱石で作られているみたいだけど何か役に立つのかな)
(でもアーシャって流行病で亡くなったんだろ、だとすると・・・)
(そうだけど、それと指輪は関係ないよ、とりあえず持っていこう)
指輪を箱に戻して箱ごと袋に入れ、ロザイルの待つ麓へ戻っていった。
「ロザイル、待たせてごめん」
「何かわかったのか?」
「とても重要な物を手に入れたよ、たぶんまた新たな術が使えるようになる」
「そうか・・・それにしてもジゼルの力って凄いな」
「不思議な力だよね、だけどこの力で悪魔を倒さないといけないんだ、それが僕の宿命」
「そう重く考えるなよ、まだあと2人の仲間もきっといるから、4人で頑張ろうぜ」
2人はザハールの町に戻ったが、ロザイルがいるため王宮の部屋には泊ることが出来ない。
「すまない、僕が兵士や戦士ではないから王宮に泊まることができないんだよな」
「別に気にすることはないよ、王様に話しをしてロザイルの馬は貰えることになったし、ところでロザイルは、あの後ムーラとどこへ行ったの?」
「シーバから南にあるレバルの山を越えたところにアデル湖という湖があって、まずはその畔にあるジールという町に行ったんだ」
「ジール?」
「うん、僕も始めて行ったんだけど、アデル湖の畔にはジールの他にアデルという町もあるらしいけどアデルには行かなかった。アデルはアルムの一番南の町らしいよ」
「ジールにアデルか・・・他には?」
「ジールからエストへ来る途中に小さい村があったな、えーと・・・そうだタンナ」
「タンナ?」
「うん、本当に小さな村で、何かあるって感じじゃなかったな」
「ジールは?」
「ジールはカイルと同じ位の広さで、町の雰囲気は他の町と変わらないかな」
「そうか・・・何か特徴とか、手掛かりとかあればと思ったんだけどな」
「ムーラも何も言ってなかったよ」
「まあいいや、とりあえず休もう、いつかタンナやジールに行ってみたいしアデル湖も気になる、まずは明日エストに行って情報を集めてみよう」




