第四章 34
バルマは仕事から帰ってきた父と話をしている。
「父さん、今日ラミルと会ったんだ」
「そうか、だいぶ立派な戦士になっていたか?」
「うん、それよりも・・・ラミルもジゼルの末裔だって言っていたよ」
「なんだって、ラミルもなのか?それで?」
「うん、ラミルのお母さんが末裔だったらしくて、お父さんの方は何も知らないらしい」
「お前も末裔だと話したのか?」
「うん、だってラミルはレミル様の子孫なんだってさ」
「なんだと、レミル様の子孫だと?そういえば妹のレイラの髪と瞳の色・・・そうか」
「それでね、僕が整術師の末裔だって話したら、一緒に来てほしいって」
「何を言っているんだ、お前には無理だ、そもそも術を使えるわけじゃないのに」
「父さんがくれた石、それからサントにおいてきた指輪、それを使えば術が使えるようになるんでしょ?」
「お前どうしてそれを?」
「これ、ラミルに借りたジゼルの本なんだ、ここには命の石のことは書いてないけど、術者の石と腕輪のことが書かれていて、これを読んでいたらなんとなく想像できたよ」
「そうか・・・知ってしまったのか。それでお前は行きたいのか」
「凄く迷っている。あいつの、ラミルの力になれるなら、もしも母さんの仇が討てるなら力になりたい、だけど足手まといになりそうな気もするんだ」
「しかし、指輪がまだサントにあるかどうか」
「お父さんごめん、実は何度かサントに行ったんだ、指輪はもう見つけて隠してある」
「お前・・・わかった、自分の思ったようにしなさい、ラミルと一緒に行くのもいいし、もしも行かないのなら石と指輪をラミルに渡しなさい」
「渡してしまっていいの?」
「ああ、あれは元々私たちの先祖が王家からいただいた指輪と石だ、だからお前が一緒に行かないなら、ラミルに返すべきかもしれない」
「わかったよ、明日ラミルと一緒にまたサントに行くんだ、それまでにどうするかを決めるよ」
翌日バルマは学校を休んで、ラミルたちと一緒にサントへ向かった。
サントのバルマの家があった場所に着くとバルマは土を掘り返して小さな箱を取り出した。
「ラミル、これが『魂の指輪』だよ」
その時、風上から魔物の臭いがして叫び声が聞こえた。
「魔物だ、ロザイル、バルマを頼む」
「わかった」
ロザイルはバルマを連れて物陰に隠れると、バルマはラミルの戦い方を見ようと覗いている。
ラミルは魔物に向かって駆け出し、ロザイルたちから離れた場所で立ち止まって剣を抜くと、もの凄い勢いで駆けて来る大きな熊の魔物に全く物怖じすることなく剣を構え、一撃で魔物を斬り裂いた。
「つ、強い、ラミルはあんなに強くなっていたんだ」
あまりの剣捌きの速さと強さに驚いているバルマに、ロザイルが声をかけた。
「ラミルの強さはあんなもんじゃない、僕が見たラミルの強さは人間ばなれしている」
「えっ?そうなの?」
「ああ、今は全く術を使っていない、僕もこの月の槍の術を使えるけど、あの剣の術を使ったラミルは絶対に敵にしたくない」
(そうなのか・・・やはり僕は足手まといになるな、彼にこの指輪を渡そう)
バルマは指輪に命の石をはめると、戻ってきたラミルに差し出した。
「ラミル、この指輪は君が持って行ってくれ」
「バルマ・・・」
「今のお前の戦い方を見て僕には無理だって確信したよ、足手まといになるのは嫌だ」
「そんなことは無いよ」
「いや、学校にいたときのお前は凄いなって思っていたけど、今のお前はあの時よりもさらに強くなっている、俺には無理だよ。それに昨日父さんと話をしたんだ、この指輪のこととラミルのこと、そうしたら、もしも一緒に行かないなら指輪をお前に返せって」
「返す?いったいどういうことなんだ」
「もともとは、この石も指輪も俺の先祖が王家から貰ったものらしい、だから一緒に行かないないならレミル様の末裔であるお前に返せって言われたんだ」
「そうか」
ラミルは残念そうにバルマの顔を見た。
「役に立てなくてごめん、でもお前の活躍を祈っているよ」
「わかった、一度ワルムに戻るから送っていくよ、魔物も出たしここへは来ない方がいい」
「そうするよ、あんなのと戦って勝てるわけないしな」
3人はワルムへ戻っていった。




