第四章 33
夕方、学校の小屋の中には、ほとんど人は残っていない。
ラミルは馬から降りるとサントの人たちのために校庭の隅に建てられた家が立ち並ぶ場所へ歩いていく。
近くには子供たちが夜まで帰ってこない大人たちの帰りを待って遊んでいるが、その中の1人の少年がラミルに気付いてレイラに声をかけた。
「あれ、レイラのお兄ちゃんじゃないか?」
ラミルに気付いたレイラが大声をあげて走ってきた。
「レイラ、良い子にしているか?」
「うん、良い子にしているよ、お父さんはまだ帰ってこないよ」
「今日は父さんに会いに来たんじゃないんだ、バルマはいるかな?」
「バルマ兄ちゃんはまだ学校だよ、今日は一生懸命に本を読んでいるんだってジル兄ちゃんが言っていたよ」
「そうか、わかった、学校に行ってみる」
「すぐ行っちゃうの?」
「また後で来るから、みんなと遊んでな」
レイラがみんなのもとへ戻って行くと、ロザイルとともに学校へ入っていった。
「あの子、ラミルの妹かい?」
「ああ、レイラって言うんだ」
「金色の髪、青い目、まさにレミルの末裔だな」
「うん、ザギルの奴には絶対に存在を知られたくないけどな」
2人は建物の中に残っていた先生に声をかけると教室の小屋に入っていった。
小屋の中には蝋燭の灯りを頼りにラミルから渡された本を一生懸命に読んでいるバルマがいた、その姿はまるで数ヶ月前の自分を見ているような気がした。
「バルマ」
「あっ、ラミルか、この本、難しすぎるよ、とてもじゃないけど覚えきれない」
「全部覚える必要なんて無いさ、術者の石があれば使えるようになる」
「その術者の石ってこれのこと?」
「それは・・・」
「この本には載っていないみたいだけど、父さんに聞いたら『命の石』っていうらしい」
「命の石?」
「うん、今日はもう遅いから明日サントに行かないか、実は隠してある物があるんだ」
「そうか、わかった・・・そうだ紹介するよ、彼はロザイル、ムーラの子孫なんだ、そしてこっちが僕の友人でバルマ、彼がさっき話したジゼルの末裔さ」
「ムーラって、あの聖戦士のムーラ?」
「そうだよ、そして手に持っているのが月の槍だ」
「凄いな、お前の剣といいその槍といい、まさか実物が見られるとは思わなかったよ」
「とりあえず今夜は僕たちもワルムに残るから、明日サントに行くまでに決めてくれないか?」
「わかった」
ラミルはバルマを残して部屋を出ると、レイラの待つ校庭に行きラシンドを待った。




