第四章 32
ザギルはラミルから離れるとロザイルの呪文を避けて体制を立て直し、その隙にラミルも素早く立ち上がって剣と盾を構え直す。
「2人相手では分が悪いな、だがラミル、力の差を感じただろう、お前など相手ではない、それから良いことを教えてやろう、ハンの村はここへ来る前に全滅させておいた、と言っても老人がたった2人しかいなかったから一瞬だったがな」
「なにっ、ハンを・・・貴様・・・」
(ラミル、もう1本の剣を抜け、ここからは僕が戦う)
(しかし・・・)
(任せろ、2本で戦うには意味がある、力の差がある以上、僕のやり方の方がいい)
ラミルは盾を放し、背中からもう1本の剣を抜いた。
「ロザイル助けてくれてありがとう、でもここからは危険だから下がっていて」
「しかし・・・」
「ザギル、てめえだけは絶対に許さねえ、俺の方こそあの王宮の中庭で殺しておくべきだったと後悔している、ここからは全力でいくから覚悟しろよ」
健人が乱暴な口調になった。
「そうか全力か、だがお前が全力を出しても相手にならん、さあかかって来い」
ラミルは体の前で2本の剣先が交差するように構え、右手をゆっくりと上げ、左手はザギルに向けて剣先を伸ばして集中する。
シーバにいたジゼルの末裔だけでなくハンの老人たちまで殺したというザギルに対し、ラミルと健人の怒りは頂点に達していた、右手に持った剣が黄金色に変わると、左手に持った剣が青白く輝きを増した。
左手に持ったロムの剣から冷気が漂いはじめると、その冷気がオーラのようにラミルの体を覆い、その体から発せられる強力な殺気にロザイルは思わず後ずさりした、ザギルの顔からは余裕の笑みが消えた。
「ザギルよ、ジゼル末裔の怒りと悲しみ、貴様には死をもって償ってもらう」
ラミルの目が青く輝き、兜の下に隠された髪の毛が金色に輝くとラミルを覆っていた冷気がザギルのもとへ流れていく、ラミルから発せられるオーラに圧倒されて動けなくなっているザギルを包むとザギルの鎧の表面が白く凍りはじめ、次第にその冷機は全身に拡がってザギルは完全に動けなくなった。
「ラ、ラミル、貴様は・・・いったい何者だ」
「我こそはジゼル王家の末裔、レミルの血を継ぎし者」
「レ、レミルだと・・・」
ラミルは無言のままザギルに向かって雷の剣を振り下ろした、稲妻の衝撃がザギルの鎧を貫く。
「グォォォォォォ」
ザギルは凄まじい叫び声を上げ、鎧の中から煙が上がった。
真っ黒に焦げた鎧が地面に落ちたが、そこにザギルの体があった痕跡が無い。
ラミル、この私を倒したと思っているのか?この程度で私は死なん、レミルの血を継ぐ者、いつか必ず俺の手で殺す、覚えておけよ、ハッハッハッハッ
不気味な笑い声が木霊した。
レミルの髪も目も元に戻り、漂っていた冷気が消えていく。
「くそっ、また逃がしたか」
(健人、今、何をした)
(いや、何もしていないよ、シリムへ行ったときと同じように違う力が覚醒したみたいだ)
仁王立ちになっているラミルに、ロザイルが話しかけた。
「ラミル・・・なんだ、今の、前に見たのと違うぞ」
「うん、これが大地の剣が進化した雷の剣さ」
「雷の剣?それに左手に持っている剣、あの冷気はフィードに似ているな」
「これはハンで作ってもらった剣さ、敵を凍らせる力があるんだ」
「凄いな・・・それにしてもさっきのラミルは怖くて近寄れなかった」
「そうか?でも近寄ってロザイルが凍ってしまったら困るからな、近寄らなくて良かったかも」
ラミルの顔には笑顔が戻っていたが、心の中ではハンの老人たちが殺されたという悲しみがこみ上げていた。
(おい、ラミル、ハンの話・・・2人って言っていたよな)
(そういえばそうだな、1人は生きているのか?)
ラミルの左手の剣が輝き、声が聞こえてきた。
ラミル様、サーです。
ロムは、この剣を作るために最後の力を振り絞って命果てました。
でも悲しまないでください、我々はあなた様を見守らせていただきます。
どうか悪魔を倒し、殺されたジゼルの末裔たちの仇を討ってください。
(ロムさん・・・そうだったのか、ありがとうみんな、俺に力をくれ、必ず悪魔を倒してみせる)
ラミルは剣を鞘に収めた、そしてロザイルに声をかけた。
「ワルムに僕の友人がいるんだ、彼はジゼルの術者の血を継いでいるんだ」
「その彼も凄い術を使うのかい?」
「彼は整術師という術者の末裔で治癒呪文を使うことができるようになるはずなんだ」
「治癒呪文?」
「ああ、体の傷を一瞬で治したりすることが出来るようになるらしい」
「それは凄い、一緒に行くことができれば凄い戦力になるな」
「だから説得したいと思っているんだ、一緒に行ってくれないか」
「わかった」
ラミルは、ロザイルを後ろに乗せてワルムへ向かった。




