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赤ずきんは狼の為に物語を変えたい

 私は『赤ずきん』という童話の主人公の赤ずきんだ。


 私はエンドレスに始まっては終わるこの世界でずっと生きていくつもりだった。私は赤ずきんという役割に誇りを持っていた。

 

 わざわざ、童話と違った行動をとるやつなんてバカだ。とくにあの狼さん。今のところは物語に従っているからいいが。

 最近の狼さんは、『赤ずきん』の狼らしくない。


 どうしてあんなに悲しそうな顔をするのか……。

 どうしてあんなに私に会うと嬉しそうにするのか……。  


 いつのまにか私は、狼さんを見るとそればかり考えるようになっていた。

 そうして狼さんを観察する内に私は気付いてしまったのだ。


 狼さんは私のことが好きなんだ。

 そうすると全部辻褄が合う。


 だけど困ったことになった。狼さんが私のことを好きだなんて気付いてしまったから、少し意識するじゃない。


 だって、当たり前だが、私が誰かに好意を寄せられるなんて一度も無かったのだ。どういう風に接すればいいのか……。


 なんてことを思っている内に、いつしか私は狼さんに好意を持ち始めていた。

 意識し始めると狼さんのいいところばかりみつけてしまうのだ。


 ガラガラした声も、大きな口も、鋭い爪がついた大きな手も全てが好きだ。そして何より、いつも優しい目を向けてくれるその目が大好きだ。


 だから、私は狼さんが私を食べる時にする悲しい目をみたくない。


 私はいつか狼さんが、行動してくれると思ってた。私に好きだと伝えてくれると。 

 でもいつまでも狼さんは『赤ずきん』の狼にとどまっていた。

 私のことを好きだという認識が間違っていたのではないか。それも考えた。でもあの目は絶対に私のことを好きな目だ。

 狼さんは意気地なしだ。


 だから私から動くことにした。今は、お花を摘み終え、おばあさんの家へ向かうところだ。

 私は、おばあさんの家に着いたら狼さんに好きだと伝える。そしてこの葡萄酒とパイを狼さんと一緒に食べるのだ。

  

 たとえ自分が消滅したとしても、私はもう狼さんが悲しい目をするのは嫌だ。


 恋をすれば人は変わるというが本当にそうだ。

 私は今まで物語に抗うなんて考えたこともなかった。だけど狼さんへの気持ちが私を変えた。


 私は狼さんの為に物語を変えたい。


 お読みいただきありがとうございます!

 この話を気に入ってくだされば、評価やブックマークなどで応援していただけると幸いです。

 

 次話で、最終話になります。

 

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