表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

狼は赤ずきんの為に物語を変えたくない

 僕は、『赤ずきん』という童話に出てくる狼だ。僕ら童話の登場人物は、童話の通りに行動しなければならない。もし、違った行動を取ると、僕は消滅し、また別個体の狼が用意される。


 みんな消えたくないから、『赤ずきん』での自分の役割をエンドレスに演じる。


 僕らの物語に終わりはない。だから、延々と時をぐるぐる回るのだ。


 僕は、自分の役割はわかっている。……つもりだった。


 しかし、僕は赤ずきんに恋してしまったのだ。一目惚れだった。

 赤ずきんから覗く笑顔は可愛くて、目はクリッとしていて、優しい声も、全てが好きだ。


 この気持ちを伝えたい。


 だけど僕は今日も大好きな赤ずきんを食べる。童話の通りに……。


 今は、赤ずきんのおばあさんを食べ、赤ずきんを待っている状況だ。僕は赤ずきんを食べるシーンが一番辛い。でも物語には逆らえない……。


 物語と違った行動をとるのが怖い。赤ずきんは童話の登場人物としてのプロ意識が高いから、そんな行動をとれば、たちまち僕は嫌われてしまうだろう。

 そして何より、僕の赤ずきんに気持ちを伝えたいという願いのせいで、赤ずきんを巻き込んで、迷惑かけるのは嫌だ。

 僕のせいで赤ずきんも一緒に消滅してしまうなんてことがあれば、もっと嫌だ。


 だから、僕は今日もこの残酷な童話の通りに物事を進める。赤ずきんに会うためだけに辛い日々を我慢するのだ。


 僕は赤ずきんの為に物語を変えたくない。



 

 お読みいただきありがとうございます!

 この話を気に入ってくだされば、評価やブックマークなどで応援していただけると幸いです。

 次話は赤ずきん視点です。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ