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第2幕 人里の襲撃 其の一

ここは妖怪の山付近にある人里。

ここでは暴徒化した天狗が時折、人里へ物資を奪いに来るということで被害をあっていた。

「ここ最近、被害が多くないか?」

「あぁ、本当にそうだよ。なんとかならないものかね?」

村人たちがそう話し合っている間に遊び人はふらりと現れた。

和傘を指し、桜の雨を防いでいた。

「うんうん、風情があるなぁ。」

満足そうな顔で団子を頬張る。

その時、強い風が吹いた。

「うおっ! なんだ!?」

傘を持っていかれそうになった八卦は突然の突風に驚く。

しかし、それは里の人々を恐怖させた。

「天狗が来るぞぉ!」

「みんな、逃げるんだ!」

蜘蛛の子を散らすように人々は家の中に逃げ込む。

「おいおい、この人里には天狗の被害が出ているのか?」

八卦は近くの男に訊ねる。

「あぁ! 早くしないと捕まっちまう!」

それだけ言うと男は家に逃げ込んでしまった。

「ふぅん…」

八卦は団子のなくなった串を咥えたまま山を見上げた。

それから1分もしないうちに天狗たちはやってきた。

天狗は里の上空をしばらく飛び回っていたがいつもとは違う様子に眉をひそめた。

「なあ、人間が1人出ているぞ!」

「今日の標的はあいつだな!」

そういうと天狗たちは人間の周りに降り立った。

その人間とは言うまでもなく歌舞伎 八卦である。

「なるほど…150歳に…100歳…驚いた、70歳か。みんな若い天狗だな。」

八卦は周りに降り立った天狗の年齢を大体に当てて見せた。

「何の真似だ?」

「いんや、若造にはお灸をすえてやらないとな。」

八卦は余裕そうな表情を浮かべながら天狗の動向を探った。

「てめえ、ふざけやがって! これからどうなるのか分かっていってるのか!?」

「そうだな、お前らが罠にかかるのならもう分かっている。」

そういうと八卦は印を結び始めた。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!」

次の瞬間、天狗たちの周りに植物が生えあっという間にとらえてしまった。

「『九字護身術』諸説が多くあるが忍術の1つ。ほかにも仏教やら道教やらが多く絡んでいるだろうが日本独自の『何でもあり』な術だ。」

八卦は植物に気を取られている天狗に得意げに説明する。

「放せ!」

「いいや、放さないね。なんでこんなことをしたのかを説明してもらおうか? どうやら他の人間も誘拐しているらしいじゃないか。」

「分かった! 分かったから!」

首にまで伸びてきた蔦を見て天狗たちは降参した。

「実は…近々この里は土砂崩れによって大きな被害を受けちまうんだ。」

最年長の天狗が八卦に事情の説明を始めた。

「原因は河童による山の開発だ。でも、天魔様が何にもしないもんだから俺たちだけでもどうにかしようと思ってこの里の人間を保護することにしたんだ!」

「なるほど。この里のことを思ってお前たちは人さらいをしていたんだな?」

「そうだ。物を奪ったのはそうしないと俺たちが保護した人間が飢えちまうからだ。」

「お前たちの言いたいことはよく分かった。だが、天魔も天魔で考えていたようだぞ?」

そういって八卦は山を指さす。

天狗たちは山を見てアッと息を呑んだ。

そこにいたのは白狼天狗の部隊だ。

1体1体が巨大な背嚢を背負っている。

先頭に立っているのは大きな天狗だ。

「てっ天魔様!?」

3人は慌てて膝を附き頭を下げる。

「お前たち、ここで何をしている?」

天魔は口を開いた。

その口調は竜巻や雷を連想させた。

「はっ! 我々は人里の被害を少しでも少なくするために…」

「それはお前たちの独断だろう?」

天魔は天狗の言葉を遮った。

「それは…」

「お前たちがお前たちなりに考えていたということは分かった。だがこれは立派な規則違反だ。山に戻れ、あとで罰を与える。」

天狗たちは顔をあげると山に向かって翼をはためかせた。

「人里の全ての家に事柄を伝え避難の準備を手伝え!」

天魔は後ろに控えていた白狼天狗に指示を出した。

白狼天狗は無言で駆け出して任務を開始した。

「さて…久しぶりだな、八卦。」

天魔は白狼天狗が去っていったのを見届けると八卦に声を掛けた。

「あぁ、随分と久しぶりだ。」

「長いこと何処に行っていたんだ?」

「少しばかり神界でな。」

「ふむ。」

天魔は納得したようにうなずいた。

「大変だったようだな。」

「まあな。」

「ちなみに今の苗字は?」

「歌舞伎だ。」

「見たままじゃないか!」

そういうと天魔は吹きだした。

「おうとも! 歌舞伎 八卦だ。素敵な名前だろう?」

「あぁ、そうだな。」

天魔は案外素直に認めた。

「前の苗字は酷かったからな。」

「やめろ!」

「何だったかな、ええとたしか…」

「やめろぉぉぉぉぉ!!」

八卦の声は守矢神社にまで響き渡ったという…

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