表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第1幕 人里の怪異 其の一

「どうしたもんかねぇ…」

「これで6件目だぞ。」

人里では不穏な噂が飛び回っていた。

なんでも、死んだ里長の幽霊が夜な夜な現れて怪異を起こしているのだと言う。

「こうなったら博麗の巫女にでも頼むかね。」

「随分と高い値段を吹っ掛けられるけど幻想郷で除霊が出来るのは彼女しかいないからなぁ。」

こうして、人里では博麗の巫女を呼んで除霊しようという話で決まろうとしていた。

そんな時"遊び人"は現れた。

「ちょっと失礼、その幽霊の怪異ってのは何なんだい?」

噂話をしていた人々は思わずその人物を凝視した。

まず目につくのはその異様な袴だ。

金、赤、緑、黒…

派手な色に派手な模様をした袴がどうしても目についてしまう。

「あんたは誰だい?」

「俺か? 俺の名は歌舞伎 八卦! その怪異、あぁこの俺が解決してくれようぞ!」

そういうと八卦と名乗る男は歌舞伎役者のようにポーズをとった。

赤線の引かれた白粉がその迫力を際立てる。

人々の取った行動は無視だった。

「おいおいおいおい! 任しとけって! これでも多少そういった類のもんは心得てるんだぜ?」

村人達は無視を決め込み続ける。

「あぁもう!」

八卦は地団駄を踏んで子供のようにごねた。

そんな地団駄を踏んでいると子供が近寄ってきた。

「おじちゃん、本当にあのお化けを成仏させられるの?」

そんな子供を見た八卦はさっきのことなど忘れたかのように破顔一笑する。

「もちろん! おじちゃんの手にかかればあっという間にそのお化けを天国に送ることが出来るんだぞ?」

「すごいすごい!」

子供は無邪気にはしゃぐ。

子供の母親らしき人物が止めようとしたが見た事が無い程にはしゃぐ子供に止める気が失せてしまったようだ。

「そうだなあ。褒めてもらったからこれあげるよ。」

そういうと歌舞伎は懐から白いものを取り出した。

「これはなあに?」

「これはおじちゃんが作ったお札だ。すごい効果だぞ?」

そのお札には赤い字で「急々如律令」と書かれており、その上には八卦のマークが付いている。

「家の前に貼っておくんだぞ?」

「うん、分かった! ありがとう!」

子供は満面の笑みで頷くと母親の下へと戻っていった。

「おかあちゃん! お札もらったよ!」

「そうね。よかったわね。」

そういうと母親は子供からお札を受け取り、袖の中へしまった。

八卦はその様子を冷たい目で見ていた。

「信じる者は救われる。」

小さな声でそう呟くと八卦は声を掛けてきた子供に向かって印を結んだ。

ーーーーー

「なによこれ…ひどい有様じゃない。」

楽園の巫女、博麗 霊夢は破壊され尽くされた人里を探索していた。

「本当にひどいな。こんなになってまで怪異を放っておくなんて。」

霧雨 魔理沙もこの惨状を見て流石に顔をしかめた。

その時、霊夢の耳に子供の泣き声が聞こえた。

「魔理沙! 今の聞こえた!?」

「あぁ、子供の泣き声だな!」

2人は泣き声の聞こえた方向に向かって走り出す。

「この家だ!」

崩れた家を2人は捜索し始めた。

「いたぞ! ここにいる!」

魔理沙はそういうと泣きじゃくっている子供を抱え上げた。

「大丈夫か? 何があったんだ?」

子供は泣いてばかりで質問に答えられるような状態ではなかった。

しばらくして落ち着いた子供はぽつぽつと話し始めた。

「歌舞伎のおじちゃんがね、お札を渡してくれたの。『家の前に貼っておくんだぞ』って。でも、お札がかっこよかったからね、持っていることにしたの。」

「そのお札は今持っているのか?」

魔理沙が訊くと子供はこくんと頷いてクシャクシャになったお札を見せた。

「ちょっといい?」

霊夢はそういって断ると、お札を触ろうとした。

次の瞬間、はじけるような音と共に霊夢の指先から火花が飛び散る。

「おい大丈夫か!?」

魔理沙が声を掛ける。

「…随分としっかりしたお札じゃないの。恐らく霊の被害をそれで防いだのね。」

霊夢は指を抑えながらお札をにらみつける。

「飛んだ術者だな。」

魔理沙がそういった時、どこからか矢が飛んできた。

「誰!?」

霊夢が幣と陰陽玉を構えて叫ぶ。

しかし、それ以降矢が飛んでくることはなかった。

「なあ霊夢、さっき飛んで来た矢に手紙が巻き付いているぜ。」

「まさかこれも呪いの類じゃないでしょうね?」

霊夢は警戒しながら手紙を開く

==========

博麗の巫女へ

久しぶりだな。

一体いつぶりになるのだろうか。

その怪異は話に聞いたところ里長の霊が被害を出していたそうだ。

その子供はお察しの通りお札で護っておいた。

里長の霊は俺が成仏させておいた。

まだまだ書きたいことはあるが紙の都合上これくらいにしておくとしよう。

幻想郷の未来に幸あらんことを。


歌舞伎 八卦

==========

「霊夢、その八卦って奴と知り合いなのか?」

「知らないわよ。そもそもこれは本当の名前なのかしら? 偽名を使っているんだったら私にはどうしようもないわ。」

「そのおじちゃん。顔に白粉を塗ってたよ。真っ白な顔だった。」

霊夢が首をかしげていると子供が八卦という人物の姿を伝えてくれた。

「う〜ん、分からないわね。」

「霊夢、もしかして先代の巫女と勘違いされていないか?」

「あぁ、そうやって考えれば辻褄があるわね。」

「しかし、そんな歌舞伎者と先代が知り合いってのはなんか変な気がするが…」

「考えても仕方ないわよ。幻想郷には影の守護者がわんさかいるんだもの。」

そういうと霊夢は空を見上げた。

すがすがしいほどに蒼く澄み、どこまでも吸い込まれそうな空が霊夢の目には映っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ