百花繚乱~後編~
ギルド・ドリームイリュージョン
『ギルドマスター』
カグラザカ・アイク、剣士(二刀流)
『サブマスター』
アーバンシェンド・リオン、銃士(拳銃・二丁拳銃・狙撃銃・散弾銃・狙撃銃)
『戦闘員』
カグラザカ・モモ、剣士(二刀流)・アイクに師事
エモニエ・ココロ、銃士(拳銃、二丁拳銃)・リオンに師事
これが今のところのギルドメンバーだ。
ココロもモモも少しずつ実力をつけてきたところだが、何せ四人という、極少人数ギルドの為、安全な狩場で少しずつお金を稼いでいる。
そんなある日のことだった。
「大変です!! なんか、変な男の人とかわいい女の人が『頼もう!!』って」
ココロが珍しく取り乱している。お客さんは初めてだからだろう。
「あー、はいはい。私に任せて」
出ていくと、案の定トモナリであった。
しかし、隣にはかわいらしい女性が笑顔で立っていた。
「初めまして。あなたがリオンさん? 本当に美人なんだな。私はユーリっていいます。トモさんがどうしてもここに来たいって言うから一緒に連れてきてもらったんだ。ね? トモさん」
なるほど。このユーリさんが、トモナリの新しい恋人というわけだ。
「あ、ああ……まあ、そういうことだ。残酷なことだって分かってる。でも二人でギルドに入れて貰えないだろうか!? リオン!! 」
「……なるほど。まあ誘ったのは私ですし、大歓迎ですよ。人が少なくて困っていたので。トモさん♪」
「お、お前その呼び方っ……」
「かわいいだろ? 」
ユーリさんがにこりと微笑む。
「とってもかわいいです。気に入りました。私はサブマスターのアーバンシェンド・リオンっていいます。ユーリさん。これからよろしくお願いします」
「これはこれはご丁寧にありがとう。私はアサノ・ユーリっていうんだ。よろしくお願いします。ほら、トモさんも挨拶は?」
「と、トリモト・トモナリです……。よろしくお願いします」
こうして、ギルドメンバーが二人増えたのであった。
本来恋敵のユーリさんも、とっても優しくて面白くっていい人。上手くやっていけそう。
二刀流剣士が二人、盾持ち片手剣士、銃士が二人、回復系魔術師を揃えたギルドは、以前に比べて随分と狩りの幅が広がっていった。とても楽しい。狩りの効率が良いのだ。
今日もギルドメンバーの皆で狩りに行く。
と、その前に空き時間があったので私はウィンセント射撃場に来ていた。
そこでとても目に余る銃士を発見してしまった。
あっ……!! もう、危なっかしい!!
気づいたときには彼の後ろに立っていた。
「え……?? 」
「もっと身体の重心を安定させなさい!! そんなんじゃ実戦で戦えませんよ!! 」
彼は驚いてビクビクしている。
「は、はい……!! 」
「……ふう。やっと形になりましたね。あなたは自己流なのですか? 」
「じ、自己流っす……。なんで俺なんかにこんな良くしてくれるんすか……?? 」
「あ!! いけない!! もうこんな時間!! 行かなくちゃいけません!! 」
「あの!! 名前教えてください!! 俺、ライト!! アイリス・ライトっていいます!! 」
「アーバンシェンド・リオンです。それではまた、狙撃場で」
……なーんてことを言って、また私はこのアイリス・ライトという男に会いたいのだろうか。
今日の狩りも無事に終え、倒したモンスターの数や強さ、生息地などの情報を打ち込む。
その情報をまとめて月末に政府に提出すると、情報に応じて報酬が貰える。これがギルドの仕組みだ。
「この調子でいけば新しいギルドホームが借りれるね! リオン! 」
「少なくとも、ギルドメンバー個人のプライベートゾーンは欲しいものですね」
「うん! 個人部屋! 欲しい!」
アイクもとても楽しそうに目をキラキラさせている。
「よーし! 頑張ろうね! リオン! 」
「はい。アイクちゃん」
私はギルドの経営がとても楽しかった。アイクと協力して、どんどんギルドを大きくしていく。
それが今の私の夢だった。トモナリとの失恋の傷もすっかり癒えて、私はとても前向きだった。
そんなある日。
「あ、師匠すみません。今日、ギルド休みます。葬式……なんで」
「葬式って?誰の?」
「あの……両親の……昨日の夜、二人ともモンスターに殺られたらしくって……」
ココロは思った程動揺していなかった。
というか、とても無感情にすら見える。
「私も同席します。師匠としてです。今日はアイクちゃんに任せました。お休みにしても構いません」
「オッケーリオン」
ということで、私はココロとココロの両親の葬儀場に来ていた。
「初めまして~あなたがココロのお師匠さん?私が姉のアピーです。妹がいつも迷惑かけてますっ」
ココロのお姉さんだ。初めて見る。黒髪ロングヘアの、おっとりした同い歳くらいの女の子だった。
「初めまして。アーバンジェンド・リオンです」
アピーさんも驚くほど動揺していない。
そんなに?そんなに両親と接点が無かったのか……?
「それでリオンさん、ココロのことなんですけど、うちのギルド家族経営でして、私がマスターでココロがサブマスターという遺言書がありまして~」
アピーさんは遺言書を私に見せる。
確かにそう書いてあった。
「師匠!こんなの嫌だよ!私ドリーム・イリュージョンに居たいよ!」
「ココロ。落ち着きなさい。そしてアピーさんのところに戻りなさい。サブマスターはあなたがするの」
「師匠……そんな……見放すの?」
「見放す訳ないじゃあないですか。今は大変な時。アピーさんと協力して、ギルド『ベッキー・ベティ』の建て直しに専念してください。寂しいですけれどね」
「師匠……うん、分かった」
返りに私は喪服のままウィンセント狙撃場に来ていた。
「撃ちますね、リオン姐さん」
気配にも気が付かなかった。何たる失態。
「あなたは……アイリス・ライトさん?」
「ライトって呼んでくださいよ。嫌なことでもあったんすか?」
「……うん。まあ、あなたに話す義理はありません」
「そっすか。すんません。俺も撃ちます」
そのまま私達は一言も会話をすることなく、銃を撃ち続けた。
「……はあっはあっ」
「はい、リオン姐さん。水です」
「あ、ありがとう……」
「いや~俺もへとへとっす……」
「実はね……私の弟子がギルドを抜けてしまうんです。仕方が無いことなのですが、これからだってときだったのに。頼りになる銃士が抜けるなんて正直キツくて……」
私は疲れからか、自分のことをペラペラとライトに話してしまっていた。
「そっすか。大変すね。その子の代わりに俺が入るとかは無理っすよね」
「馬鹿言ってるんじゃありません!あなたなんてまだまだ指導が必要で……」
「指導してくれないんすか?」
そうか。自己流のライトをギルドに入れて、私が鍛え上げられれば戦力になる。筋は悪くないんだし。
「うん……うん。いいかもしれません。着いてきてください」
「え?!?!マジでいいんすか?!やったあ!!」
「その代わり私の指導は厳しいですよ」
「ひえっ……でも上手くなれるならいっか!」
変わった男だな、とそのとき私は思っていた。
「今日からドリーム・イリュージョンでお世話になります!アイリス・ライトっす!よろしくっす!」
「よっろしく~!てかいつの間にこんなイケメン?リオン説明してくれる?」
アイクちゃんがにやにやしながら言った。けれど別にやましい理由などはない。
「ライトとはウィンセント狙撃場で出会いました。自己流の銃士で技術もまだまだですが、少し鍛えれば即戦力になると思い、私がスカウトしました。何か問題があれば私に言ってください」
「いいんじゃないか?ココロが抜けたばっかりなんだし」
トモナリがすぐに言った。
「いいと思うぞ。何より、リオンが嬉しそう」
ユーリさんが続けて言う。
「あのっ……!ユーリさん、そういうことではなくてですね」
「いいんじゃねーの?やるじゃんサブマス」
う、モモまで……。
「と、いうことで!さっそく修行です!行きますよ、ライト!アイクちゃん、夜の狩りまでには必ず戻ります!」
「へいへーい」
「もっと腰を落として!……それは落とし過ぎです!この位置に腰を固定して……」
「あのさ……リオン姐さん」
「はい?」
「さっきから腰にずっと手回されてて、俺すげードキドキしてやばいんだけど」
私は今の今まで仮にも男性に密着していたことに気がつき、急に恥ずかしくなって一歩退いた。
「ご、ごめんなさい!は、はしたないですよね……」
「いや、そうじゃなくて」
ライトはせっかく一歩退いた私にぐっと近づいた。
「え、な、なんですか……」
「俺、リオンさんのことが好きになっちゃった」
「へ?!?」
「よかったら俺とお付き合いして頂けませんか?」
つづく