10月15日-6 〈ダイブ〉についてとか
PT49の意識内。
クレアの意識の中身。
ルエの目的はそこにあるという。
「ほんとに説明する気はあるんでしょうね」
当然、事情を知らないレミにとっては、ルエの言葉は説明にもなっていない。
それでもルエは冷静だった。
「話の順序がある。もとよりわかりづらい目的だ。……あのアンドロイドの意識内に、実はひとつの人格が眠っている」
「人格?」
「人間の精神がそのまま存在しているんだ。表層には出てこないだけでな。つまり、人がひとり、PT49の中にいるということになる」
レミは釈然としない様子だった。
すんなりと理解できてしまう私の方が異常なのだ。
数週間前だったら、私ですら彼のいうことを信じていたか怪しい。
しかし、私は目撃したのだ。
彼の指しているであろう、その人格に。
「といっても、俺以外にこのことを知っている人間はいない。所長もチームリーダーもそれは同じだ。誰にも話していない」
「……」
「信じろといっても無理があるだろう。全面的に信用してもらえなくていい。だができる限りは話す」
「……わかった。その人格があると仮定して、あんたはそれに何の用があるわけ?」
レミが訊ねると、ルエはしばし沈黙した。
常に歯切れのいい答えをするルエだから、彼が黙りこむ姿はめずらしかった。
「俺とその人物はとある因縁を持っている。過去に決着をつけるため、話をつけなきゃならない」
「目的って……そんな個人的な話なの? そんなことに私たちを巻き込むっての?」
「対等じゃないといったろ。ある程度好き勝手できるのは俺の立場が強いからだ」
「それでも、結構譲歩してくれてるみたいだね」
私が口を挟むと、ルエはこちらを見て笑った。
「おだてているつもりか?」
「全然。続けて」
「いや。これ以上話すことはない。次はお前らの番だ」
ちらりと、私とレミの目が合う。
何も話すな、レミの目はそう語っていた。
「あんたがそれだけしか話さないってのなら、私たちが話すことも限られる。でもそうね、私が知りたいことをあんたが話してくれるってのなら、こっちもしっかり話してみるよ」
「お前が知りたいこと?」
「そう。たとえば……〈ダイブ〉についてとか」
遅い反撃。
今度は私が笑う番だ。




