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10月15日-5 こいつは嘘をついたことがない

「正直にいったところで信用してもらえないだろうが、俺は対等な交渉のできない人間じゃない。交渉は人間関係の根幹だ。そこを誤魔化したらいつか痛い目に遭う。だから、お前らにもメリットがあるようにしている」


ルエの言葉は計算づくのようでありながら、かつ人間的でもあるようだった。

人心を見抜く交渉術は彼の得意とするところだ。


「どうしても信用できないなら構わない。だがお前らの目的を果たすのに、上と繋がっている人間を無視するというのはすこし不合理じゃないか?」


強気であるように見せかけているが、そういう交渉術だ。

きっと私たちを利用しないと、ルエの目的も達成できないに違いない。

そうでなければ、ルエが私たち下っ端に構ってくる必要がないのだ。

しかし、そうだとわかっていながら……選択肢はひとつに決まっている。


「わかった。のるよ」

「ちょっ……」


驚いたのはレミだった。


「まだこいつの目的も聞いてないのに! リスクが高すぎる!」


当然の意見だ。

もうすこし冷静でいられたら、適切な判断が見えてくるかもしれない。

しかし、ルエの性格を知っているからこそ、決断に時間をかけることができなかった。

私たちの助けが必要な状況だろうと、私たちが乗り気でなかったらあっさりと手を引く。

そして別の手段を必ず見つける。

策をひとつに絞らず、高い可能性さえ簡単に切り捨てることができる人間だ。

私たちなんか、いつでも捨てられる手駒にしか見えていないだろう。

そんな彼の性格を知っているからこそ、決断を急いだ。


「ここから脱出する方法はいくつも考えたよ。でもどれも無理がある。ひとりでさえ逃げきることはできないと思う。しかもこいつにその情報を握られてるんだから、方法をじっくり考えてる余裕すらないでしょう。悔しいけど、こいつを頼る以外の方法がないんだよ」


計画の発起人であるレミでさえ、方法がないということについては賛同するだろう。

だからこそ私の発言を否定することはできない。


「それに……こいつは嘘をついたことがない」


私たちの手助けをすること、それに関して嘘はないはずだ。

私はルエの方を見やった。

彼は満足げに頬を緩めていた。


「目先の損得より、円満な関係を保つことが大事だからな。嘘は疑心暗鬼しか生まない」

「だったらその高慢ちきな態度もあらためたら?」

「そればっかりは無理な相談だ」


軽口を挟みながらも、ひとまず捉えた希望。

一世一代のチャンスを逃すわけにはいかない。


「ルエ。あなたの目的を聞かせて」

「ああ」


ルエは指の先で、頭をとんとんと叩いた。


「俺の目的は……PT49の、意識内だ」


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