10月?日-7
わかった?
ナナちゃんの不信感の正体は、人間によって植えつけられた惨虐と破壊の記憶から来る感情。無意識下ゆえ自分で認識できない魂の傷。メンテナンスをしていた自分が見たことのない景色だっていいたいの? そりゃそうだよ。あの子の表層意識からは、すべての記憶が奪われてるんだから。白衣を着て偉そうにふんぞり返ってる気のおかしい連中にね。
目的? あんたが知らないでなんであたしが知ってるのよ。
あんたは鏡に映る自分に恋しているだけだよ。自分の影を守りたいだけ。アンドロイドは鏡。愛情は決して相手に届かない。自分の想いは反射して自分を慰めるだけ。あんたがナナちゃんに発しているのは愛情と錯覚している触手。毒手。
かわいそうなナナちゃん。
あんたさっきわかったようなこといってたよね。コードが暴走する原因は恐怖がなんとかって。結局何にもわかってないんだね。あれは無意識の怒りが表面に現れたんだよ。人間を憎む気持ち、恨む気持ち、抑圧していた感情が放出された結果だよ。放出のきっかけはあんたの干渉。あんたが放っておけば穏やかな止水でいられたものをこんな形で呼び起こしてしまった。
責任をとれとはいわない。責任をとるためにさらに干渉するくらいなら何もしないであげた方がずっとマシ。あの子に降る不幸はすべてあたしのもの。あんたのものじゃない。
だからさ、理解しなよ。あんたはナナの気持ちをひとつだってわかっちゃいない。さっき交わした薄ら寒い約束だって、ナナちゃんを追いつめるだけなのさ。わかったら二度とナナちゃんに近づかないこと。何も知らず、何にも関わらず、静かに平和の日々を送るといい。いや、それ以外に道はない。
あたしが何者かってことについても、何も知らないでいい。口うるさくいわれてるでしょ。無関心無関心無関心。いっておくけど、全部あたしの善意だからね。あんたともめたくないし、あたしの活動を邪魔されたくないの。放っておけば済むんだから、こんな簡単なことってないでしょ。いままで通り、表面上の業務を何食わぬ顔でこなしていきなさい。
じゃあ、地上でおやすみ。
二度とここに帰ってこないようにね。
くれぐれも。




