ソーサリー試験
「…い。起きてください我が主君よ。」
オレンジがかった濃いピンクの髪の青年は眠っている黒髪の少年に話しかけていた。
「ん…あぁ?うんおはよう、ロゼ」
「おはようございます。もう、昼時ですがね」
「ごめんごめん…いや昔の夢を見てさ。」
少年、霊神輝瑠の見ていた夢。
それは彼の忌まわしき過去の記憶。
「輝瑠がこの世界に来るきっかけの日の夢ですか?」
「そうだな。」
輝瑠は過去にある実験の被験者だった。
その実験は「神降ろしの儀式計画」と言われており、輝瑠が神に選ばれた依代が故に巻き込まれた実験だった。
だがその実験は失敗に終わった。
何故ならそれは輝瑠を巻き込んだことにより、神の怒りを買ってしまったが故に教会は消滅したからだ。
そしてその時の影響で輝瑠は別の世界に飛ばされてしまった。
「まぁ、今はそれよりも…ロゼ。」
「何でしょうか?」
「俺になんか用があるだろ。」
ロゼは「やっぱり分かります?」と笑いを含み告げた。
彼の名前はロゼ・ティアー二。
彼もまた神の依代と呼ばれる類の人間だ。
「受けてみません?あの試験。」
あの試験とは、恐らくソーサリー試験のことだろう。と、輝瑠は思う。
「ソーサリー試験か?何でまた。」
輝瑠の疑問にロゼは「えーとですね~?」とやはり笑いを含みながら答える。
「仕事の範囲を今より拡大したく思いまして。」
「あー、あのライセンスか。」
ソーサリー試験に合格すると、「ソーサリー」の資格者だと証明する「ソーサリーライセンス」を入手できる。このライセンスは世界中のありとあらゆる場所で優遇され、中には資格者にしか紹介されない仕事なども存在する。
「ほら、次の仕事はライセンスの有無で難易度が大分変わるじゃないですか。」
輝瑠とロゼは何でも屋である。
何でも屋は依頼されるジャンルは問わずに受ける職業として存在している、例えそれが表には出せない汚れ仕事だとしても。
「あー無いと面倒臭いか」
輝瑠は軽く遠い目をしていたが、やがて決めた。
「うん、受けようか試験。」
「そう言うと思いまして既に手配は済ませております」
「選択肢は元から存在してなかったようだな?」
元からロゼは試験に参加し、輝瑠も参加させるつもりだったようだ。