『儀式』
深い深い森の中。
空には大きな丸い月が浮かぶ、満月の日。
森の中に作られた小さな教会では、ある儀式が行われていた。
「器の準備はどうなっている。」
1人の眼鏡を掛けた黒髪短髪の青年が問う。
「完了しております。現在依代達に異常は見当たりません。」
青髪長髪の女性は無表情で機械のような無機質な声で青年に答えた。
「そうか、では始めよう。」
彼らは白衣に身を包んでいた。
教会に白衣。そして木製の建物であり、女神像やピアノ、長椅子があり、その中に機械が盛りだくさん。
明らかに場違いな物が置かれ、人がいる異質な空間。
しかし、そんなことは気にもせず彼らはおもむろに機械を弄り出した。
すると辺りが明るく淡い光に包まれ始めた。
「ど、どうなっている」
青年は慌てて機械の中にいるにんげんと機会を操作する液晶画面を見比べ始めた。
「神が宿る予兆なのか?異常が発生したのか?」
教会に置かれた機械、その中にはヒト«神の依代»が液体の中に浮かべられていて、教会の場違いな雰囲気をだす要因の一つでもある。
しかし、彼らの行う儀式には必要な物だった。
彼らの目的は神を手に入れること。
普通では見れない。認知すらできない。そんな存在をどう手にするのか。
そこで彼らは考え思いついたのである。
「神を手にすることは出来ない。なら、力だけ手にすればいい。」
古来より神は依代に宿ると言われ、宿っている時だけは姿を認識することは出来ないが、力を存在を認識することは可能とされる。
つまりは、神降ろしの器«依代»を手にした後、支配すれば神を手に入れたも同然だと彼らは考えついたのである。
そして神に依代と選ばれたのがこの少年だった。
「光が強いな……ん?おい!!器が!!」
神は気に入った人間を依代に選ぶ。
つまり、依代に選ばれた者を支配することは神の怒りを買うのと同義であり彼らは神の怒りを買ってしまった。
「!器を中心に光が」
教会は光に包まれる。しかし、深い森の中にある教会の異変には誰も気づかない。
誰にも知られることはない。
そしてある冬の満月の夜、教会は消滅した。